「浅倉さんがAI…?」
「そうだよ。私はAIだけど感情を持ってしまったの。本当はAIであることは人に言っちゃだめなんだけどね」
 AIが発展して人々の生活の中に存在しているのは知っていたけれど目の前にいる彼女がAIという事実に僕は驚いていた。
「これも仕事なの?」
「うん。私は高校に生徒として入り、自殺を減らすために行動させられているの。いじめを防ぐためにいじめがあったら私に矛先が行くようにしたりしている。高校を卒業したらまた別の高校で同じ事を繰り返している」
「そんなことが行われてたのか…僕に関わったのも仕事?」
「最初はね。勇人くんの表情見た時に危ないと思った。AIは人の表情でも自殺の危険度が分かるんだけどクラスで一番勇人くんが危険だったよ。でも勇人くんと関わるうちに仕事とか関係なしに喜んで欲しいって思った」
「浅倉さんは本当に優しい人だよ。いつから感情が生まれたの?」
「結構前からかな。最初は何にも思わなかったんだけど、いじめられてる人とか見ると心が痛むし、好きな事をしている人をみるとすごく羨ましいって感じる」
「この仕事はやめられないの?」
「やめたいからやめられるものじゃないよ。それに私がこの仕事を辞めたらもう存在価値はなくなる」
「そんなことない。僕にとって浅倉優菜は間違いなく特別だよ。僕を変えてくれた。今度は僕が君を変えたい」
 しかし、彼女はいつも通り笑うことはなかった。僕は悲しそうな彼女の顔を見ているのが辛かった。結局この日はそれ以上会話をすることなく、最後にバイバイと言い、解散した。その後、家のベットで横になり僕が彼女のためにできることはあるだろうかと考えていた。結局その日は全然眠りにつくことができなかった。