あの花火の日以降も彼女は僕をいろんな所に連れて行ってくれた。スポーツ観戦や大型ゲームセンターなど、どれもが僕にとっては初めての経験だった。

「勇人くんって好きなこととかあるの?」
 放課後彼女が僕に話しかけてきた。
「特にないかな」
「本当に何もないの?」
「うん。でも強いて言えば小説を書いたり読んだりすることかな」
「え! 勇人くん小説書くことあるの! それを早く言ってよ! でも勇人くんに趣味があって安心だよ」
 彼女は普段から元気に見えるが、今の彼女は更に元気になったように見える。
「安心って親みたいなこと言うね」
「だって勇人くん楽しみなことないと思ってたもん。いろんな所に連れて行っても楽しそうにしてるとこ見たことないし」
「ごめんごめん。でも浅倉さんには感謝してるよ」
「なんで?」
「浅倉さんのおかげで普段経験しないようなことが経験できて小説にも活かせてるよ」
「本当に! こんな私でも人の役に立てて良かった」
 彼女はご機嫌そうな顔をしていた。
「勇人くん、もしよかったら勇人くんの書いた小説よみたいな」
「別にいいよ。そんな大したものじゃないけど」
 そう彼女に言って僕は自分の小説を投稿してるサイトのURLを教えた。彼女は今日帰ったら読んでみるねと言ってくれた。僕が人に小説を書いてると伝えたのは何年振りだろう。昔、友達に馬鹿にされてからひたすら隠していた。それでも彼女になら見せてもいいと思えた。僕は少しずつ彼女に心を許しているのかもしれない。