今日は僕が日直の日で昨日転校してきた彼女も席が隣なので一緒に日直になった。彼女はまだ日直の仕事を知らないため、僕が教えながら仕事をこなした。
「最後にこの日誌を職員室の先生の所に届けたら終わりだよ」
 放課後僕は日直の最後の仕事を彼女に教えた。
「勇人くん今日は一日ありがとう。放課後にまで教えてもらってごめんね。」 
「全然大丈夫だよ。部活にも入ってないから」
「この学校部活入ってる人多いから入ってるのかと思ってた」
「確かに多いね。でも一つのことに夢中になることが苦手なんだよね。何かをして楽しいって気持ちも悔しいって気持ちも感じないし。小さい時から感情があんまりないんだよね」
「そんなことないよ。感情がなかったら本をそんなに読めないよ」
 彼女は優しくそう言った。何も言葉を返せずにいる僕に笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「今日この後時間ある?」
「特に用事はないけど…」
「じゃあ7時にバーチャル空間に来て。私が君の感情を探すから」
 そう言うと彼女はメモを僕に渡して教室から出て行った。メモの内容を見るとバーチャル空間の待ち合わせ場所だった。バーチャル空間は広く、いくつもの世界があるのでこのように待ち合わせ場所を伝えておかないと会うことはできない。例えば、ハチ公前集合と言っても各サーバごとにハチ公前があるイメージだ。
 バーチャル空間に行くのは久しぶりだった。そもそもなんで僕を誘ったのかも分からなかった。彼女が言った言葉の意味も理解できないまま僕は彼女の待ち合わせ場所に入った。