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十月の半ばになっても、公園の狂い咲きの桜は健在だった。気温も下がったこともあって、しばらくは季節外れのお花見ができるらしい。
今日も学校帰りに公園に寄ると、透はベンチに座って桜を見上げていた。
小さく風が吹いて落ちた花びらが彼の頬を撫でたのを見てふと、彼が消えてしまうのではと不安がよぎった。確証も何もない不安を振り払い、わたしはいつものように彼の元へ行く。
ブランコに揺られながら他愛もない話をしていると、透が躊躇いがちにわたしに訊いてきた。
「ずっと気になっていたんだけど……その足、どうしたの?」
指さしたのは、わたしの左膝に巻かれたサポーターだった。真っ黒で厚い生地が膝に巻かれているから、普通に立っているだけでもスカートの下から見えてしまう。少し迷って「部活で怪我をした」と簡単に話すと、透はぱあっと顔を明るくした。
「運動部に入ってるってこと? ふくらはぎの筋肉とか、そんな気がしたんだよね!」
どこに目をつけているんだ。
疑いの眼差しを向けると、透は慌てて「ちがうって!」と弁明してくる。
「俺も陸上部入ってたからさ、癖だよ癖! 今は休んでいるんだけどさ、全国大会まで行ったんだ。決勝で負けちゃったけど、それでも県代表にまで選んでもらえて、やっててよかったと思う。君はどうしてその部活を始めたの?」
十月の半ばになっても、公園の狂い咲きの桜は健在だった。気温も下がったこともあって、しばらくは季節外れのお花見ができるらしい。
今日も学校帰りに公園に寄ると、透はベンチに座って桜を見上げていた。
小さく風が吹いて落ちた花びらが彼の頬を撫でたのを見てふと、彼が消えてしまうのではと不安がよぎった。確証も何もない不安を振り払い、わたしはいつものように彼の元へ行く。
ブランコに揺られながら他愛もない話をしていると、透が躊躇いがちにわたしに訊いてきた。
「ずっと気になっていたんだけど……その足、どうしたの?」
指さしたのは、わたしの左膝に巻かれたサポーターだった。真っ黒で厚い生地が膝に巻かれているから、普通に立っているだけでもスカートの下から見えてしまう。少し迷って「部活で怪我をした」と簡単に話すと、透はぱあっと顔を明るくした。
「運動部に入ってるってこと? ふくらはぎの筋肉とか、そんな気がしたんだよね!」
どこに目をつけているんだ。
疑いの眼差しを向けると、透は慌てて「ちがうって!」と弁明してくる。
「俺も陸上部入ってたからさ、癖だよ癖! 今は休んでいるんだけどさ、全国大会まで行ったんだ。決勝で負けちゃったけど、それでも県代表にまで選んでもらえて、やっててよかったと思う。君はどうしてその部活を始めたの?」