それから、通院以外で晴れた日の放課後は公園に立ち寄り、彼――透と話すようになった。
わたしより一つ上の十七歳。幼い頃はこの近くに住んでいたらしい。近かった頃は毎日のように通っていたという。
「一回り離れた妹がいてね。よく公園で遊んでいたんだ。……今は俺が高校に進学したから、時間がなくてさ。でも休みの日は、父さんに連れられて夕飯だって呼びに来るんだ。それが嬉しくて、遅くまで公園にいたのかもしれないなぁ」
透はよく自分の家族の話をしてくれた。とても仲が良いようで、特に妹には甘いらしい。
彼の個人的な話を、わたしは相槌を打って聞いていた。話を掘り下げてもよかったのかもしれないけど、なぜかそんな気にはなれなかった。
自分勝手だとは思ったけど、無理に笑みを作った顔を見るのはなんだか申し訳なくて、わたしは名前も家族も、自分から話そうとはしなかった。もちろん、彼からも問われることはない。
それでもよかった。
夕日が完全に落ちて、辺りの街路灯が灯る時間まで彼の話に耳を傾ける。たったそれだけのことが、今のわたしには心落ち着く時間だった。