膝の負担を減らすための安静期間とはいえ、休んでばかりなんていられない。
 ストレッチだけじゃ物足りなくて、気を紛らわすために通院の日以外は学校から家までの距離を遠回りして帰ることにしていた。幸い、歩いて通える距離だ。探検するのも少し長い散歩と思えば気が楽だった。

 今日も学校が終わると、いつものように帰路につく。しばらく歩いていると、建物の向こう側に薄桃色の何かが見えた。風に揺れるたび、何かがひらひらと落ちている。すぐ下には同じ色の絨毯が敷かれているようで、不意にその薄桃色の何かが、春に咲くあの花を連想させた。

 でも今は十月。残暑が続いていたが、ここ数日で朝方は一気に冷え込んだ。それでも季節はまだ秋だ。

 どうしても確かめたくて足早に向かうと、そこには木々に囲まれた小さな公園があった。そのうちの一本が、十月にも関わらずブランコの上に覆いかぶさるように、満開の桜が咲き誇っている。