ドクターストップを宣言されてから一ヵ月半が過ぎた十月。診断されたあの日から学校と家、そして病院を行き来する日々が続いている。
 いつもなら、放課後は夜遅くまで練習していたのに、日がまだ落ちない夕暮れ時に学校を出るのは後ろめたさがあった。グラウンドの横を通れば、見知った陸上部の生徒と目が合ったような気がして、俯いて足早に立ち去る。
 しばらく部活を休む旨を伝えると、多くの部員から「皆頑張っているのにどうしてお前は来ないんだ」と言われた。怪我のことも伝えたけれど、納得してもらえていない。

 わたしだって練習したい。
 せっかく選抜メンバーに選ばれたのに、こんなことで諦めたくない。
 でも今のわたしができるのは、ストレッチを欠かさず行い、安静にすることで膝にかかっている負担を減らすことだけ。そのために新人戦も棄権した。今後のためにと自分に言い聞かせて、観客席から部員の勇姿を眺めては虚無感に包まれていた。

 グラウンドの端がぎりぎり見える位置で足を止めて振り返る。後輩が助走をつけて、自分の背よりも高いポールを跳び越えようとしていた。しかし、踏み切る足がもたついて、勢いあまってぶつかってしまう。すぐに起き上がったのを見て安堵する反面、妬ましいと思ってしまった。

 ――跳びたいなぁ。

 そう呟いても、誰の耳にも届かない。