【新たな力】
洞窟の出口から外へ出たアルは、周囲を見回して途方に暮れた。
自分を襲った刺客はほとんど逃亡したらしく、馬も何も残っていない。
帰る手段もなく、地形もよくわからない深い森の真っ只中だ。暗く生い茂る樹木の合間から、わずかに日差しが降り注いでいる。今が昼なのか夕方なのか、うまく把握できないほど鬱蒼としていた。
「とりあえず、何とかしてこの森を抜けないと……」 アルはその場にへたり込みそうになる自分を奮い立たせた。
落ち着いて考えれば、今の自分には【トレーディング】と【サーチング】という2つのスキルがある。
悪魔が言っていたように、“能力を組み合わせて使う”ことができるかもしれない。
【サーチング】──悪魔から譲り受けたスキル。
その名前からして何かを探す能力らしいが、具体的にはどう使えばいいのか?
アルは頭の中で“検索”という前世にもあった概念を思い描いてみた。
すると、不思議な感覚で“周囲に存在するモノ”を俯瞰できるような気がする。
例えば「ここから半径〇キロ以内にいる人や生物はどこにいるのか」などをイメージすると、頭の中にぼんやりと位置情報が浮かんでくるようだった。
さらに【トレーディング】と組み合わせることで、可能性は広がる。具体的には、以下のような効果が直感的にイメージできた。
1、自分のあげたい物A、欲しい物Bを指定する
⇒ある一定の範囲内で「AとBを交換してくれる相手」がいるかどうか、ピンポイントで検索できる。
2、もらいたい物Bを指定しない
⇒範囲は広がり、その代わり「Aと"何か"を交換してくれる相手」がわかる。
さらに、
・知識・スキル・権利など、無形物や概念の交換も可能
・ただし、交換をしてくれる相手が見つからなければサーチングは成立しない。
・意識のない(眠っている、気絶している等)相手に触れていれば、強制的に交換できる
・貨幣は交換も検索もできない
といった能力があることをイメージできた。
これらの特性から、アルはまず“今最も必要なもの”を手に入れることを考えた。
深い森を抜けるには移動手段として、従者や馬が欲しい。そして傷を負ったとき用にポーションなどの薬も必要。
逆に言えば、今手元にあるのはバッグの中に数本のポーション、簡単な食料品、多少の護身用アイテムだけだ。
アルは一つ賭けに出ることにした。
まず、手元にあるポーションを“交換の出品”とする。そして“従者”を求める。
つまり「俺のポーションと『従者としての忠誠』を交換してくれる存在」を探す、というのだ。
普通なら成立しないだろうが、【サーチング】を使ってみれば、ひょっとしたら誰か(あるいは何か)が応じるかもしれない。
アルは試しに頭の中でイメージを組み立てる。
(……俺のポーションと“従者としての忠誠”を交換してくれるやつを探す……)
そう念じた瞬間、アルの【トレーディング】と【サーチング】が反応した。
霧が晴れるように、半径3km以内の森に存在する“交換相手候補”の情報が輪郭をもって浮かび上がる。
「……あれ? すぐ近くに……」 一つの強い反応がある。
しかもかなり強大な存在感。動物とも人間とも違う不思議なエネルギーを感じる。
「まさか、本当に見つかったのか……?」
驚きつつも、アルは慎重にその気配の場所へと向かった。
洞窟の出口から外へ出たアルは、周囲を見回して途方に暮れた。
自分を襲った刺客はほとんど逃亡したらしく、馬も何も残っていない。
帰る手段もなく、地形もよくわからない深い森の真っ只中だ。暗く生い茂る樹木の合間から、わずかに日差しが降り注いでいる。今が昼なのか夕方なのか、うまく把握できないほど鬱蒼としていた。
「とりあえず、何とかしてこの森を抜けないと……」 アルはその場にへたり込みそうになる自分を奮い立たせた。
落ち着いて考えれば、今の自分には【トレーディング】と【サーチング】という2つのスキルがある。
悪魔が言っていたように、“能力を組み合わせて使う”ことができるかもしれない。
【サーチング】──悪魔から譲り受けたスキル。
その名前からして何かを探す能力らしいが、具体的にはどう使えばいいのか?
アルは頭の中で“検索”という前世にもあった概念を思い描いてみた。
すると、不思議な感覚で“周囲に存在するモノ”を俯瞰できるような気がする。
例えば「ここから半径〇キロ以内にいる人や生物はどこにいるのか」などをイメージすると、頭の中にぼんやりと位置情報が浮かんでくるようだった。
さらに【トレーディング】と組み合わせることで、可能性は広がる。具体的には、以下のような効果が直感的にイメージできた。
1、自分のあげたい物A、欲しい物Bを指定する
⇒ある一定の範囲内で「AとBを交換してくれる相手」がいるかどうか、ピンポイントで検索できる。
2、もらいたい物Bを指定しない
⇒範囲は広がり、その代わり「Aと"何か"を交換してくれる相手」がわかる。
さらに、
・知識・スキル・権利など、無形物や概念の交換も可能
・ただし、交換をしてくれる相手が見つからなければサーチングは成立しない。
・意識のない(眠っている、気絶している等)相手に触れていれば、強制的に交換できる
・貨幣は交換も検索もできない
といった能力があることをイメージできた。
これらの特性から、アルはまず“今最も必要なもの”を手に入れることを考えた。
深い森を抜けるには移動手段として、従者や馬が欲しい。そして傷を負ったとき用にポーションなどの薬も必要。
逆に言えば、今手元にあるのはバッグの中に数本のポーション、簡単な食料品、多少の護身用アイテムだけだ。
アルは一つ賭けに出ることにした。
まず、手元にあるポーションを“交換の出品”とする。そして“従者”を求める。
つまり「俺のポーションと『従者としての忠誠』を交換してくれる存在」を探す、というのだ。
普通なら成立しないだろうが、【サーチング】を使ってみれば、ひょっとしたら誰か(あるいは何か)が応じるかもしれない。
アルは試しに頭の中でイメージを組み立てる。
(……俺のポーションと“従者としての忠誠”を交換してくれるやつを探す……)
そう念じた瞬間、アルの【トレーディング】と【サーチング】が反応した。
霧が晴れるように、半径3km以内の森に存在する“交換相手候補”の情報が輪郭をもって浮かび上がる。
「……あれ? すぐ近くに……」 一つの強い反応がある。
しかもかなり強大な存在感。動物とも人間とも違う不思議なエネルギーを感じる。
「まさか、本当に見つかったのか……?」
驚きつつも、アルは慎重にその気配の場所へと向かった。

