「今から合唱コンクールの実行委員を決めます。」
先生のその一言を合図に一斉にクラスがざわつく。
「実行委員?めんどくせー」
「なんで生徒にやらせんだよ。」
「合唱コンクールは楽しそうだけど実行委員はちょっとね〜」
いろんな言葉が先生に向かって投げられる。
「せんせー。小野沢さんがやればいいと思いマース」
そう言いながら手を挙げたのは、スクールカーストの上位に位置するグループのリーダー、華藤茜だ。
ちなみに小野沢さんとは私のこと。
小野沢陽鞠。これが私の名前。
「み、みんながいいなら、、、」
「小野沢でいいかー?」
「うーっす」
「じゃあ小野沢が実行委員だな。ちゃんと小野沢のこと手伝うんだぞー」
「ハーイ」
結局誰も手伝わない。
だけど信じる。
誰かが手伝ってくれると。

「大丈夫?陽鞠。」
そう言って声を掛けてきたのは幼なじみの篠宮葉奈。
いつも何かあるたびに手伝ってくれたり相談にのってくれたりする。
「大丈夫大丈夫!いつも通りやるだけよ!」
「何かあったら言ってね?相談に乗るから。」
「ありがとう!」
正直言って本当は実行委員などやりたくなかった。
昼休みになったら葉奈と少し会話してから誰もいないところに行く。
これが最近のルーティーンだ。
ここでは笑う必要もないし自分ではない誰かを演じる必要もない。
「信じなきゃ。やりとげなきゃ。頑張らなきゃ。」
いつも一人になるたびに言い聞かせる。
誰も傷つけないように。
目に見えない何かを守るように。
もう何も、失わないように。
だから一人で今日も泣く。