何だか料理を頑張ってみようと思った。

「あつっ!」

熱したフライパンに指が触れてしまった……。手を流水につけて、ため息をつく。自分はキッチンに嫌われているんだろうか。むーっと唸りながら蛇口を捻る。

それでも、頑張ってみようと思って、頑張るんだと決めた。

「自分がこんな女の子っぽいのキャラじゃないんだよー……」

けれど次に出るのは愚痴の混じった息。

そしてまた次の瞬間には頑張る思いでいっぱいになる。

天秤がぐらぐらし過ぎている私だった。

もう逢えないという人を想って、何をしているんだろう。

でもいつかは逢う人だからとすがってしまうのだろうか。

……でも何で料理?

苦手なことに向かっている自分。自問してしまった。

何か出来ること、何かしたくてしょうがなくって。

ただ立って待っているだけは出来なくて。

目についたことをしてみた。

……全く使った気配のないキッチン。

料理をしないでいたのは、それがママとの繋がりだったからだろうか。

記憶にあるママは、とても上手に、手際よく道具と材料を動かして。

美味しいご飯を作ってくれた。

だから、料理はママに頼り切りでいることが、私を無意識にママへ繋いでいる糸だった気がしてきた。

ママと離れて暮らして、恨むことはなかった。

知らない恋人といても、変わらないままだったから。

「真紅ちゃん!? どうしたの!?」