隣でママが寝ている。私の方を向いて、絶対に寝返りを打っていないのだ。
ある種の根性を感じる。
私はなかなか寝付けないでいて、コロコロしていた。
そのうちうつ伏せになって頬杖をつきながら、枕元のカゴで丸くなっているるうちゃんを見遣った。
ママが、この部屋で唯一の娯楽だったような観葉植物を入れていたカゴを空けてくれたものだ。タオルを敷いた即席のお部屋に、紫色の小鳥は収まっている。
ママを気遣ってか、白ちゃんと別れてからるうちゃんは一言も喋っていない。
……ねえ、るうちゃん。
頭の中で話しかける。ママを起こすのは忍びないし、声にしていいかもわからない。架くんに忠告されたばかりだ。
……私さ、黎がすきなんだ。るうちゃんは、黎のこと知ってるかな?
紫色の小鳥はぴくりともしない。寝入っているのだろうか。
……でもね、私は、黎にとって毒なんだって。
毒は殺人の方法の一つだ。近代ではそうでもないが、古来、腕力で劣る女性による殺害の道具であったらしい。
毒に魅入られた歴史上の人物なんて、危ない人しかいない。
……私も、自分の血が嫌い。
すきな人を殺してしまいかねない血で生きているなんて。
……けど私、この血でなかったら、黎に逢えてたのかな……?
そこを天秤にかける意味はない。少しでもこの血を正当化したいだけだ。じゃないと、自分でこの血を、狩り尽くしてしまいたい気持ちになる。
『真紅嬢よ』