「……は!?」


 ぐるぐるぐるぐるぐる。


 屋上で感じたわけのわからないあの気持ちが、この体の中に一瞬にして戻ってきたような気がした。


「好き……って何が?」


「ミント」


「……はあ」


 その答えに、後輪の留め具に引っ掛けていたローファーの踵が、ガクッと滑る。


同時に、この体の中のぐるぐるの流れが一気に堰き止められて、行き場をなくして困惑するのを感じた。


「星野さ、いつも旨そうに食ってるじゃん。チョコミントとかミントタブレットとかこの」手に持った当たりの棒を、陽太は再び軽く振る。


「アイスとか。ミント好きなんだろ?」


 言われて改めて思い返す。食べ物に限らず、リップクリームはアプリコットミント、ほんの少しだけ香らせているフレグランスはラズベリーミント、なんならミントフレーバーが一般的な歯磨き粉に至っては、ミントをそのまま食べているかのような味が売りの「トリプルミント」のものを使っている。


 と言うことで、確かにわたしはミントが好きだ。でもそれがどうしたというのだろう。


「なのに、さっき食ってくれないしさ、ガム。あれもめっちゃミント味なのに」


「……いや、食べないでしょアレは」


 まあ、そうだよね。わかってるけどさ。陽太は笑って、再びペダルの空漕ぎを始める。


「星野は、ミント味のどういうとこが好きなの?」