丹念に丹念に、再度切り開き検分していった柔らかな臓器のちょうど真ん中に、それはあった。


 鑷子(せっし)で最新の注意を払って取り出し、トレイに置く。


 それは、硬く硬く丸められた、小さな紙切れのように見えた。


 内臓の中に置かれていたにもかかわらず、それは一切血で汚れておらず、むしろ少しだけ黄ばんだ古紙のような風合いが見て取れた。


「先生、何を……」


 少しだけ困惑したように呟く藤原さんを制して、第一・第二助手の二人に縫合の指示を出すと、わたしは改めてそのトレイの中身に向き合う。


 落ち着け、落ち着けわたし。


 そう言い聞かせながら、手の震えを全身全霊で封じ込めて、鑷子の先でその紙を開く。


 嫌になる程ギュッと固められたその紙はなかなか開かない。一瞬力の入りすぎた指先が鑷子を滑らせ、紙の端を破いてしまう。


 聞こえるはずのないデジタル時計の、秒針が進む音が耳元に響いた気がした。


 細く長く、息を吐き出しながら、少しずつ固まった紙玉をほぐすポイントを探す。


 探す。探して、探して。


 ゆっくりと塊がほころび、解けていく。


「これ……」