「彼氏さん、お洋服はどんなお色味が好みとかあります?」


「学校での服装は黒が多かったんですけど、これからお仕事のときはスーツだし……」


「スーツはどんな感じのをお持ちだかわかります?」


「濃いめの紺色、みたいなのは見たことあります」


「じゃあこちらのスーツとか割と雰囲気似てません?」


「あっ、確かにこれに近いです」


「ではこれに合わせて、ネクタイいくつか合わせてみましょうか。シャツは白が多そうですか?」


「はい。わー、よかった。男の人へのプレゼントって全然わからなくて。お母さんに聞くのも恥ずかしいし」


「ふふ、こういうご相談を受けるためにも私たちは店頭にいるので、いくらでも相談してくださいね」







「初恋とかやばいわ萌えるわ。『新社会人になる彼氏への初めてのバレンタインプレゼント選び』とかたまらんわ」


 ラッピングに少しお時間いただきますので、その間他のお店などご覧になります? じゃあメッセージカード買ってきます。承知しました、行ってらっしゃいませ。


 そんなやり取りでお客様を送り出した後、私は店内でネクタイのラッピングに勤しんで……は実はいない。 


 今目の前で丁寧にそれをしているのは、スタッフリーダーの神崎太郎だ。ちなみに昨年までは大学の元同級生でもあった。