「みんな、今日は伝えたいことがある」

 家中のメイドと執事を集めてエルヴィン様はお話をされました。

「私は妻を娶ることにした」

 その言葉にまわりがざわざわとする。
 当たり前ですわ、あれだけ渋っていたエルヴィン様が自ら宣言されるのですから。
 どんなご令嬢なのかしら。

「相手はヴェーデル伯爵令嬢だ。しかし、家族に虐げられてまともな生活をさせてもらえていない。ゆえに、おそらくテーブルマナーや挨拶、礼儀など不十分なことが考えられる。それでうちに来た時にみんなに失礼な態度をとることもあるだろう」

(なんだそれ……? なぜそんなご令嬢をエルヴィン様が?)

「だが、彼女はとても心清い子で純真なんだ。だから笑わず、そして焦らせずにゆっくりこの家に慣れさせてあげてほしい。私からのお願いだ」

 そういってエルヴィン様はメイドや執事に向かってなんと頭を下げたのです。
 隣にいたレオン様やラウラさんも慌ててエルヴィン様にお顔をあげてもらうように促しています。

「今日、その子がうちにやってくる。きっとみんなも彼女、シャルロッテの優しい心に触れると思う」

 そういってお話をしたあと、自室に戻られました。
 夕方頃、予告通り彼女はいらっしゃいました。

 とても可憐で繊細なご令嬢、こんな子がどうして?と思っていた時、彼女のたどたどしくも礼を尽くそうとする様子を見て私の考えは間違っていたと気づきました。
 彼女を見つめるエルヴィン様の目も、あんなに優しく愛おしく見つめる目を見たことがありません。

 シャルロッテ様は何か輝く素晴らしいものを持っていて、みんなを幸せにする。
 そんな風にこの時思わずにはいられませんでした──