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母親、晶子の連絡を受けて、父、清孝が慌てて帰って来た。

『花紋が消えたって本当か?』

『ええ。そうなのよ。』

『どうして?どうして消えたんだ。』

『それが翔君も、わからないって。花姫会に連絡しても、わからないから、花姫を診れる専門の資格がある医師の診察を受けて。って言うばかりで…。

それに花姫専門医なんて知らないから、紹介してって言ったら、あの神蛇っていう先生を紹介するのよ。花姫専門医の中で、経験も信頼もある医者だって言うのよ。
あんな忍葉を花姫だなんて言うヤブ医者信用できないわ。』

『いつまでお前はそんなことを言っているんだ。忍葉には、もう花王子だっているんだぞ。花王子家が、忍葉が花姫なのは間違いないって言っているんだぞ‼︎』

『そんなこと言っても、花紋はまだ、現れていないそうじゃない。』

『だからって、祈祷の時、倒れた原因は、いつもの体調不良じゃないって、道忠さんの話しで、お前もわかっただろう。本当にお前は、馬鹿なことをしやがって。』

『…だって忍葉を、

『明日、は日曜か…。明後日になったら、神蛇先生のところへ美咲を連れて行ってやれ。』

『でも、あんな医者…。

『花紋が戻らなかったらどうするんだ‼︎』

その言葉を聞いて渋々、晶子は頷いた。

『そうよね。今は、花紋が元に戻る方が大事ね。』

『それで翔君は何て?』

『もう会う気はないし、千虎家の決定も覆らないって。』

『もう諦めた方がいいかもな。花紋だって消えたんだ。戻らないかもしれないし…。』

『そんな‼︎美咲と美月は双子の花姫なのよ。そうじゃなくなるわけ無いわ。そんなはず…。』

『美咲はどうしているんだ?』

『翔君が帰ってからずっと部屋に閉じこもっているわよ。今日は、朝から出かけてたし…、そう言えば、何処へ行ってたのかしら。美咲。』

『貴方も、こんな時に朝から居なくて、今日は、仕事休みでしょ。家に居て貰わないと困ります。』

『急な呼び出しがあったって朝、言っただろう。客相手の仕事なんだから仕方ないだろ。

明日も、接待でゴルフだから、美咲のこと見張ってろよ。お前ももう、美月たちに構うなよ。』

そう言うと、
『風呂に入って来る。』
と言って、リビングを出て行った。

清孝が風呂場へ行くと風呂の用意はできていなかった。

風呂の湯を張りながら、体を洗う。

全く晶子のやつ。家事をしないんだから。

忍葉が居なくなってから、家が少しずつ荒れていってるし、ご飯は出来合いものばかりだし…。

本当は、呼び出しなんかなかったけど、機嫌の悪い晶子と一緒にいて、とばっちりを受けたくない清孝は、朝からスーツを着て、時々、行く将棋クラブに朝から出かけて時間を潰していた。

明日は、丁度、ゴルフの誘いを受けたから行くことにした。

忍葉に戻って来て貰うのが一番、いいんだけどな。晶子がいまだに目の敵にしてるからな。なんとか気が変わらないものかと考えながら、体を流した。

まだ、溜まりかけの風呂に浸かりながら、溜息を吐く。

美咲はもう駄目だな。馬鹿なことをしてくれたもんだ。まさか、あれが全部、自作自演だなんて騙されるよな。翔様も気の毒だよな。

手切金も、あの二人があのままだと貰えなくなりそうだし、大人しくして貰わないと、
明日の朝、もう一度、釘を刺しておかないとな。

でも、やっぱり一番は、忍葉が家に戻って来ることなんだけどな。

晶子さえ、改心すれば、絶対、戻ってくるはずなんだけどな。どうにかならないか、清孝は色々、知恵を絞って見るが、いい案は思い浮かばない。

せっかくのでかい船なのに、みすみす手放すなんて勿体ねぇなぁ。

そんなことを考えながら、風呂の湯を両手ですくって顔を洗うと風呂から上がった。