♢♢♢♢♢
予定より出発は遅くなったけど、紫紺様、秘書の道忠さん、美月と藍蓮様、それから花姫会の櫻葉さんと一緒に、
お祖父ちゃんたちの家へと、向かった。
しっかり首元までボタンができるブラウスを着ようかと思ったけれど、車での移動時間が長いので、楽なワンピースの上に、羽織りをきることにした。上のボタンをすれば、花紋はしっかり隠れるし、車中のエアコンの温度を考えても、冷えやすい私には丁度、良かったから。
TPOに合わせて、花紋が隠れる服を着れば、取り敢えず、花紋に振り回されることは無くなりそうでホッとした。
途中寄ったパーキングエリアで、
櫻葉さんと美月とトイレに行って戻る時、道忠さんが一人で居るところを見かけ、声を掛けた。
『道忠さん少しいいですか?』
『どうかしましたか?忍葉様。』
『ちょっと話したいことがあって…』
と話し始めると、櫻葉さんと美月は、気を使ってくれたのか、
『先に車に戻っていますね。』
と車へと歩いて行った。
2人が離れていくのを見送りながら、
『寮に入るのを辞めたのに、そのまま、花王子家に入らず、お祖父ちゃんたちの家に行くことにしてしまって…』
『そのことでしたら、気になさることはありませんよ。』
『えっ‼︎でも、花姫になったら、早く花王子家に入らないといけないんじゃ…。』
『それはそうですし、殆どの花姫は、早い段階で、花王子家に入られます。
中央区管内の花王子家は警備がしやすいし、安全ですからね。生活の拠点はそこに置きますが、ずっとそこに居るわけではありませんよ。
花姫様も普通の人間ですから、家族で、長期の旅行に行ったり、海外に留学する方や、温泉地で療養なさる方だっていらっしゃいます。
花姫には、花姫のそれまでの生活がありますから、
忍葉様のように、簡単に、いかない事情をお持ちの花姫様も、稀にいらっしゃいます。
そういった方は、花王子家に入るまで、別の場所で過ごすことはよくあることです。
寮に入ることを思えば、忍葉様が祖父母のところで過ごされる方が、余程、有難いです。
雲泥の差ですからね。』
『…雲泥の差…?』
『花王子であるのに、自分の花姫を寮に入れるなんて甲斐性も責任も何もないと思われても仕方ないですからね。
その点、花姫がご自身のお身内の方の元に、
花王子家に入る前に、暫く滞在するとなれば、手間もお金もかかることですし、
代々、花王子家は、花姫の家族、親族、その土地の者を大事にしてきましたからね。
流石、花王子だとなります。
周りの見方が全然、変わるんです。』
『…そんなこと紫紺様は何も…。』
『紫紺様は、忍葉様のことを、ずっと思ってきたんです。
やっと会えたんです。何をおいても大事になさろうとなさいます。
その紫紺様が、忍葉様が気になさることをわざわざ話したりしませんよ。』
それはそうだと思った…
『私は、紫紺様の秘書です。紫紺様とは、立場が違いますので、言わせて頂きますが、
忍葉様がすぐ紫紺様の元へいけないお気持ちも、事情も理解できますから、
忍葉様が祖父母の方の元へ行くことは、賛成しています。
ただ、紫紺様に迷惑をかけたくないと思っておいでなら、
周りや紫紺様を気にしたり、焦ったりして、中途半端な判断をせず、
それが一番、迷惑ですから、
時間がかかってもいいので、
しっかりご自身と向き合って、
今後どうなさるか、決断なさって下さい。』
痛い言葉だった。その通りだから…、
『わかりました。』
そう答えるのがやっとだった。
予定より出発は遅くなったけど、紫紺様、秘書の道忠さん、美月と藍蓮様、それから花姫会の櫻葉さんと一緒に、
お祖父ちゃんたちの家へと、向かった。
しっかり首元までボタンができるブラウスを着ようかと思ったけれど、車での移動時間が長いので、楽なワンピースの上に、羽織りをきることにした。上のボタンをすれば、花紋はしっかり隠れるし、車中のエアコンの温度を考えても、冷えやすい私には丁度、良かったから。
TPOに合わせて、花紋が隠れる服を着れば、取り敢えず、花紋に振り回されることは無くなりそうでホッとした。
途中寄ったパーキングエリアで、
櫻葉さんと美月とトイレに行って戻る時、道忠さんが一人で居るところを見かけ、声を掛けた。
『道忠さん少しいいですか?』
『どうかしましたか?忍葉様。』
『ちょっと話したいことがあって…』
と話し始めると、櫻葉さんと美月は、気を使ってくれたのか、
『先に車に戻っていますね。』
と車へと歩いて行った。
2人が離れていくのを見送りながら、
『寮に入るのを辞めたのに、そのまま、花王子家に入らず、お祖父ちゃんたちの家に行くことにしてしまって…』
『そのことでしたら、気になさることはありませんよ。』
『えっ‼︎でも、花姫になったら、早く花王子家に入らないといけないんじゃ…。』
『それはそうですし、殆どの花姫は、早い段階で、花王子家に入られます。
中央区管内の花王子家は警備がしやすいし、安全ですからね。生活の拠点はそこに置きますが、ずっとそこに居るわけではありませんよ。
花姫様も普通の人間ですから、家族で、長期の旅行に行ったり、海外に留学する方や、温泉地で療養なさる方だっていらっしゃいます。
花姫には、花姫のそれまでの生活がありますから、
忍葉様のように、簡単に、いかない事情をお持ちの花姫様も、稀にいらっしゃいます。
そういった方は、花王子家に入るまで、別の場所で過ごすことはよくあることです。
寮に入ることを思えば、忍葉様が祖父母のところで過ごされる方が、余程、有難いです。
雲泥の差ですからね。』
『…雲泥の差…?』
『花王子であるのに、自分の花姫を寮に入れるなんて甲斐性も責任も何もないと思われても仕方ないですからね。
その点、花姫がご自身のお身内の方の元に、
花王子家に入る前に、暫く滞在するとなれば、手間もお金もかかることですし、
代々、花王子家は、花姫の家族、親族、その土地の者を大事にしてきましたからね。
流石、花王子だとなります。
周りの見方が全然、変わるんです。』
『…そんなこと紫紺様は何も…。』
『紫紺様は、忍葉様のことを、ずっと思ってきたんです。
やっと会えたんです。何をおいても大事になさろうとなさいます。
その紫紺様が、忍葉様が気になさることをわざわざ話したりしませんよ。』
それはそうだと思った…
『私は、紫紺様の秘書です。紫紺様とは、立場が違いますので、言わせて頂きますが、
忍葉様がすぐ紫紺様の元へいけないお気持ちも、事情も理解できますから、
忍葉様が祖父母の方の元へ行くことは、賛成しています。
ただ、紫紺様に迷惑をかけたくないと思っておいでなら、
周りや紫紺様を気にしたり、焦ったりして、中途半端な判断をせず、
それが一番、迷惑ですから、
時間がかかってもいいので、
しっかりご自身と向き合って、
今後どうなさるか、決断なさって下さい。』
痛い言葉だった。その通りだから…、
『わかりました。』
そう答えるのがやっとだった。