『それより忍葉は朝、早くから庭に出て何をしてたんだ?』

『えっ?早くに目を覚ましちゃったから、
敷地内なら好きに散策していいって藍蓮様が言っていたのを思い出して、散歩に。

昨日、玄関から見えたでしょ。このお庭。
近くで見てみたくて。』

『そうか。』

『朝食は、何時からだ?』

『6時半です。今日は、柘榴様もいらっしゃいます。花姫様にお会いするの楽しみになさってましたよ。
花紋が現れたと聞いたら喜ばれます。』

『急に押し掛けて悪いが、俺の分も用意して貰えるか?』

『はい。かしこまりました。』

『俺たちは、庭を見させて貰うから。先に屋敷に戻っていてくれ。』

『えっ‼︎いいの?』

『ああ、いいよ。』
と言ってまた、頭を撫でられた。

『忍葉様、庭師自慢の庭なんで、ゆっくり見てあげて下さい。』

『こんな庭作れたら自慢ですよね。凄く手入れされてて、どこも綺麗で…。壁掛けプランターがどれも可愛いし…。凄く素敵です。』

『忍葉様が言ったことを聞いたら、庭師の清ちゃんが喜びます。』

『それでは、失礼します。』
そう言うと、2人は屋敷の方へ戻って行った。

『さあ。見て回ろう。』
そう言って、紫紺さまが、私の手を握って歩き出した。

少し緊張しながら、庭を散策し始めた。

2人きりで話せる時間は、以外と少ない。

そのことがわかってきたから、聞きたいことは、沢山あるけど、どうしても伝えたいことを話すことにした。

『私、ずっと目や髪の色が人と違って、アザがあることは疎まれることだと思ってた。

それが違うってわかってきて、

昨日の夜、初めて紫紺様は、目の色や髪の色を嫌うかどうかが気になったの。

紫紺様が目の色を綺麗だと言ってくれていたことを知って嬉しかった。』

横を歩いていた紫紺様が、私と向き合うと怒ったような顔をして、しっかり目を見て、

『忍葉の目の色も髪の色も、綺麗だ。
その色は俺の花姫の証だ。
嫌ったりしない。』
訴えるように言うのを聞いたら、
しがみついて泣いてしまった。

愛されたかったんだ。
お母さんに、自分を。

誰かに私であることだけを理由に、愛されたかったんだって泣きながらそう思った。

泣き止むまで、紫紺様は、ずっと頭を撫でていてくれた。落ち着いて、顔をあげたら、微笑んでくれた。

頭をポンポンと優しく叩かれて、
『戻ろうか。』
と言った。

心がなんだか温かくて、ただ、紫紺様と手を繋いで歩いているだけで幸せだと思った。