♢♢♢♢♢
早朝に目が覚めた。
カーテンを開けてベランダまで出て、白んでいる空を眺めた。
空気が清々しくてムシッとした夏の暑さも、それほど気にならなかった。
まだ、起きるには早すぎるとは思ったけど、もう一度、寝る気分にはならなかったので、
敷地内なら好きに散策していい。
と昨日、藍蓮様に言って貰っていたことを思い出し、庭を散歩することにした。
顔を洗いにサニタリールームに入り、鏡を見たら、濃くなり始めていた目と髪の色がすっかり変わっていた。
薄い桃色だった瞳の色は、濃い桃色に、
薄過ぎて白緑色だった髪の色は、灰色ががった緑になっていて、
見慣れているはずの自分の顔立ちが違って見えた。
慌てて自分の胸を確かめて見た。
神蛇先生が花紋が現れるなら、そこだろうと言っていた場所、右側の鎖骨の直ぐ下辺りに、花紋が現れていた。
アザはまだ薄ら残っていたけど、本当に消えてしまいそうだった。
紫紺様が言っていた通り、複雑な紋様の中にあった花木は枝垂れ桜だった。
これと全く同じものが紫紺様の胸にある。
そう思うと自分の胸にある花紋が堪らなく愛しく思えた。
もう一度、自分の姿を見た。
アニメの様な目と髪の色、
裸眼で地毛だと思われないかもしれない。
けど、これが私が生まれた姿なんだと思った。
母親にも妹の美咲にも疎まれたけど、自分は好きでいようと思った。
できるなら紫紺様もそうでいて欲しいけど…。
あっ、紫紺様に連絡しなきゃ。あっ、でも、朝、早すぎる?
と悩んだすえ、
コミュニケーションアプリから紫紺様へ、
花紋現れました。
とても綺麗な枝垂れ桜でした。
とだけ送った。
きっと音は切って眠っているだろう。
そう思ったら、気づいた今、知らせておきたいと思った。
いつ、気づくだろう?
喜んでくれるだろうか?
気になりつつも、身支度をして、散歩に出た。
なんだか気分が高揚して、じっとしていられなかったから。
昨日、玄関まで来る時に、チラッと見えた洋風にガーデニングされた庭を近くで、見てみたいと思って行ってみた。
広々とした庭に、石畳で、通路が、庭を眺めて歩けるように作ってあって、脇には、色とりどりの小花が植えてあり、
周りには大小様々な色とりどりの花木や柵を使ってはわせたつる性の植物があちこちに配置してあった。
ガーデニングの道具をしまっているんだろう味のある木製の小屋には、アイビーが這っていて、
蔦科の植物を這わせた棚の下には、
庭を眺められるベンチまで置かれていた。
一人で見て歩くのが勿体ないくらい手入れの行き届いた綺麗な庭だった。
凄い神気が自分に向かって来るのを感じた、
胸がドキリとした、次の瞬間、様子が違うけど、紫紺様だと気づいた。
えっ?こんな時間にどうしたんだろう?
そんなに慌てて…そう思いながら、近づいて来る神気の方向を見ると、紫紺様が走って来ているのが見えた。
後ろの方には、男性の方一人とメイド服を着た使用人の女性の方が2人もいる。
紫紺様は、私の前まで来ると、両肩を持って、
『忍葉‼︎花紋が現れたって本当か‼︎』
と訊くと、同時に、私の胸の辺りを見た。
鎖骨のすぐ下辺りからあるので、洋服から、半分くらいはみ出て見えている花紋を見ると、
『間違いない。俺と同じ番の花紋だ。』
そう言って花紋を愛しそうに撫でた。
恥ずかしさに真っ赤になりながら、
『紫紺様…、そこを触られるのは…ちょっと恥ずかし過ぎます…』
『あー、すまない。』
紫紺様も気まづそうに手を引っ込めた。
『…もしかして…それでここに?』
『そうだ。当然だ。花紋が現れたと聞いてジッとしていられるか‼︎
忍葉は、スマホに出ないし…。』
『…スマホ?スマホは部屋にあります。』
紫紺様がかっくり肩を落として、
『忍葉。スマホは、持ち歩かないと意味がないだろう?』
『えっ‼︎…???…
あっ、よく考えたらそうだ…。
あー、今まで持たなかったから…、
…ごめんなさい。気がつきませんでした…。』
やってしまった…と思ったけど、仕方ない。
言われるまで、スマホを持ち歩くという概念が私には全く無かった。
『知らなかったことは、仕方ない。でも、これからは持って出歩いてくれ。何かあった時に困るだろう。』
道忠さんに、その為に持たせて貰ったんだった。これでは本当に意味がないとシュンとしてしまった。
『はい。持ち歩きます。』
『そんなに気を落とすことはないさ。』
そう言って頭を撫でてくれた。
なんだか随分、甘やかして貰っている気がした。
後ろから、紫紺様を追いかけて来た男性が紫紺様のすぐ横まで来た。
すぐ後ろに使用人2人も来た。
私、何か凄くいけないことをしてしまったのかも…と冷や汗が出てきた。
『紫紺様、花紋は?』
そう訊きながら、皆が私の鎖骨辺りを確認して、
『間違いないですね。紫紺様の番の花紋です。あ〜、急いで本家に連絡しないと‼︎
あ、写真、花紋が写ってる写真撮っていただけませんか?』
『写真は、ダメだ。』
『わぁ。本当‼︎枝垂れ桜の花紋。私、今日、朝番で良かったわ〜。
え〜、紫紺様。写真ダメなんですか〜。残念。』
『綺麗な花紋ですね〜。紫紺様と一緒に、一番で見れたなんて自慢できるわ。
花姫とのツーショットでもダメですか?紫紺様。』
『ダメだ。』
なんか結構な騒ぎになってる?
紫紺様が写真を強く拒否するのはなんでだろう?
と思いながら、確認はきっと必要だろう。
ひょっとしたら花姫会も。
『後で、美月に撮って貰います。きっと美月の持っている洋服を借りたら、全体が見える写真が撮れると思います。』
『写真はダメだ‼︎』
紫紺様がもう一度言った。
『そうですか。本家の皆が喜びますのに…。』
と言ってシュンとなった父くらいの年齢の男の方の姿がなんだか可愛らしく見えた。
『紫紺様、その方は?』
『あっ‼︎私としたことが、失礼致しました。
忍葉様。紫紺様の家の執事をしております。
角端 実忠といいます。
花姫様が見つかったと聞いてから、ずっとお会いしたいと思っておりました。お会いできて嬉しいです。
紫紺様の仰る通り綺麗な瞳の色ですね。』
『ああ、当たり前だ。
益々、濃くなって本来の色になったみたいだ。良かったな。』
紫紺様が目の色を綺麗だと言ってくれていたんだ……嬉しい。
『はい。朝見て、これが私の生まれた姿なんだと思えて嬉しかったです。』
『そうか。良かったな。』
と言って頭を撫でながら、
『忍葉の花紋が現れたから、朱雀門家に行く。とつい口を滑らしたら、
実忠が私も付いて行きます。
と言ってきかなくてな。騒がせてすまない。』
『当たり前です‼︎紫紺様の花姫様に花紋が現れたんですよ‼︎何処にでも付いて行きます。』
何処にでもって…。
『ごめんなさい。朝早くから、お騒がせして…。そんな大騒ぎになるなんて思っていなくて…。そちらの方たちも、お仕事のお邪魔をしましたよね。ごめんなさい。』
『こんないい知らせ。夜中だって、構いません‼︎』
『本当、そうです‼︎邪魔だなんて。
紫紺様の花姫様に会って花紋が見れたなんて、皆んなに羨ましがられる光栄なことです。ねっ。』
『はい。みんな昨日、忍葉様が来る。
って聞いてから張り切ってたんです。
お休みの子なんか出勤変わってって、頼んでました。』
『私、本家に連絡をしてきます。
もし、気が変わりましたら、いつでもお写真、送って下さい。では、失礼致します。』
実忠さんは、足早に歩いて行ってしまった。
『本当に連絡して良かったの?』
『あー、勿論だ。して貰わないと困る。』
『なら良かったけど…。』
早朝に目が覚めた。
カーテンを開けてベランダまで出て、白んでいる空を眺めた。
空気が清々しくてムシッとした夏の暑さも、それほど気にならなかった。
まだ、起きるには早すぎるとは思ったけど、もう一度、寝る気分にはならなかったので、
敷地内なら好きに散策していい。
と昨日、藍蓮様に言って貰っていたことを思い出し、庭を散歩することにした。
顔を洗いにサニタリールームに入り、鏡を見たら、濃くなり始めていた目と髪の色がすっかり変わっていた。
薄い桃色だった瞳の色は、濃い桃色に、
薄過ぎて白緑色だった髪の色は、灰色ががった緑になっていて、
見慣れているはずの自分の顔立ちが違って見えた。
慌てて自分の胸を確かめて見た。
神蛇先生が花紋が現れるなら、そこだろうと言っていた場所、右側の鎖骨の直ぐ下辺りに、花紋が現れていた。
アザはまだ薄ら残っていたけど、本当に消えてしまいそうだった。
紫紺様が言っていた通り、複雑な紋様の中にあった花木は枝垂れ桜だった。
これと全く同じものが紫紺様の胸にある。
そう思うと自分の胸にある花紋が堪らなく愛しく思えた。
もう一度、自分の姿を見た。
アニメの様な目と髪の色、
裸眼で地毛だと思われないかもしれない。
けど、これが私が生まれた姿なんだと思った。
母親にも妹の美咲にも疎まれたけど、自分は好きでいようと思った。
できるなら紫紺様もそうでいて欲しいけど…。
あっ、紫紺様に連絡しなきゃ。あっ、でも、朝、早すぎる?
と悩んだすえ、
コミュニケーションアプリから紫紺様へ、
花紋現れました。
とても綺麗な枝垂れ桜でした。
とだけ送った。
きっと音は切って眠っているだろう。
そう思ったら、気づいた今、知らせておきたいと思った。
いつ、気づくだろう?
喜んでくれるだろうか?
気になりつつも、身支度をして、散歩に出た。
なんだか気分が高揚して、じっとしていられなかったから。
昨日、玄関まで来る時に、チラッと見えた洋風にガーデニングされた庭を近くで、見てみたいと思って行ってみた。
広々とした庭に、石畳で、通路が、庭を眺めて歩けるように作ってあって、脇には、色とりどりの小花が植えてあり、
周りには大小様々な色とりどりの花木や柵を使ってはわせたつる性の植物があちこちに配置してあった。
ガーデニングの道具をしまっているんだろう味のある木製の小屋には、アイビーが這っていて、
蔦科の植物を這わせた棚の下には、
庭を眺められるベンチまで置かれていた。
一人で見て歩くのが勿体ないくらい手入れの行き届いた綺麗な庭だった。
凄い神気が自分に向かって来るのを感じた、
胸がドキリとした、次の瞬間、様子が違うけど、紫紺様だと気づいた。
えっ?こんな時間にどうしたんだろう?
そんなに慌てて…そう思いながら、近づいて来る神気の方向を見ると、紫紺様が走って来ているのが見えた。
後ろの方には、男性の方一人とメイド服を着た使用人の女性の方が2人もいる。
紫紺様は、私の前まで来ると、両肩を持って、
『忍葉‼︎花紋が現れたって本当か‼︎』
と訊くと、同時に、私の胸の辺りを見た。
鎖骨のすぐ下辺りからあるので、洋服から、半分くらいはみ出て見えている花紋を見ると、
『間違いない。俺と同じ番の花紋だ。』
そう言って花紋を愛しそうに撫でた。
恥ずかしさに真っ赤になりながら、
『紫紺様…、そこを触られるのは…ちょっと恥ずかし過ぎます…』
『あー、すまない。』
紫紺様も気まづそうに手を引っ込めた。
『…もしかして…それでここに?』
『そうだ。当然だ。花紋が現れたと聞いてジッとしていられるか‼︎
忍葉は、スマホに出ないし…。』
『…スマホ?スマホは部屋にあります。』
紫紺様がかっくり肩を落として、
『忍葉。スマホは、持ち歩かないと意味がないだろう?』
『えっ‼︎…???…
あっ、よく考えたらそうだ…。
あー、今まで持たなかったから…、
…ごめんなさい。気がつきませんでした…。』
やってしまった…と思ったけど、仕方ない。
言われるまで、スマホを持ち歩くという概念が私には全く無かった。
『知らなかったことは、仕方ない。でも、これからは持って出歩いてくれ。何かあった時に困るだろう。』
道忠さんに、その為に持たせて貰ったんだった。これでは本当に意味がないとシュンとしてしまった。
『はい。持ち歩きます。』
『そんなに気を落とすことはないさ。』
そう言って頭を撫でてくれた。
なんだか随分、甘やかして貰っている気がした。
後ろから、紫紺様を追いかけて来た男性が紫紺様のすぐ横まで来た。
すぐ後ろに使用人2人も来た。
私、何か凄くいけないことをしてしまったのかも…と冷や汗が出てきた。
『紫紺様、花紋は?』
そう訊きながら、皆が私の鎖骨辺りを確認して、
『間違いないですね。紫紺様の番の花紋です。あ〜、急いで本家に連絡しないと‼︎
あ、写真、花紋が写ってる写真撮っていただけませんか?』
『写真は、ダメだ。』
『わぁ。本当‼︎枝垂れ桜の花紋。私、今日、朝番で良かったわ〜。
え〜、紫紺様。写真ダメなんですか〜。残念。』
『綺麗な花紋ですね〜。紫紺様と一緒に、一番で見れたなんて自慢できるわ。
花姫とのツーショットでもダメですか?紫紺様。』
『ダメだ。』
なんか結構な騒ぎになってる?
紫紺様が写真を強く拒否するのはなんでだろう?
と思いながら、確認はきっと必要だろう。
ひょっとしたら花姫会も。
『後で、美月に撮って貰います。きっと美月の持っている洋服を借りたら、全体が見える写真が撮れると思います。』
『写真はダメだ‼︎』
紫紺様がもう一度言った。
『そうですか。本家の皆が喜びますのに…。』
と言ってシュンとなった父くらいの年齢の男の方の姿がなんだか可愛らしく見えた。
『紫紺様、その方は?』
『あっ‼︎私としたことが、失礼致しました。
忍葉様。紫紺様の家の執事をしております。
角端 実忠といいます。
花姫様が見つかったと聞いてから、ずっとお会いしたいと思っておりました。お会いできて嬉しいです。
紫紺様の仰る通り綺麗な瞳の色ですね。』
『ああ、当たり前だ。
益々、濃くなって本来の色になったみたいだ。良かったな。』
紫紺様が目の色を綺麗だと言ってくれていたんだ……嬉しい。
『はい。朝見て、これが私の生まれた姿なんだと思えて嬉しかったです。』
『そうか。良かったな。』
と言って頭を撫でながら、
『忍葉の花紋が現れたから、朱雀門家に行く。とつい口を滑らしたら、
実忠が私も付いて行きます。
と言ってきかなくてな。騒がせてすまない。』
『当たり前です‼︎紫紺様の花姫様に花紋が現れたんですよ‼︎何処にでも付いて行きます。』
何処にでもって…。
『ごめんなさい。朝早くから、お騒がせして…。そんな大騒ぎになるなんて思っていなくて…。そちらの方たちも、お仕事のお邪魔をしましたよね。ごめんなさい。』
『こんないい知らせ。夜中だって、構いません‼︎』
『本当、そうです‼︎邪魔だなんて。
紫紺様の花姫様に会って花紋が見れたなんて、皆んなに羨ましがられる光栄なことです。ねっ。』
『はい。みんな昨日、忍葉様が来る。
って聞いてから張り切ってたんです。
お休みの子なんか出勤変わってって、頼んでました。』
『私、本家に連絡をしてきます。
もし、気が変わりましたら、いつでもお写真、送って下さい。では、失礼致します。』
実忠さんは、足早に歩いて行ってしまった。
『本当に連絡して良かったの?』
『あー、勿論だ。して貰わないと困る。』
『なら良かったけど…。』