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道忠は、帰りの車に乗り込むと大きな溜息をついた。

『大変だったみたいですね。』
と運転手が声を掛けた。

『ああ、当たり前のことが何一つ、通用しない家族ほど面倒臭いのは無い。

一つ要件を話す度に、御託を並べる奴が、
家族の人数分いるんだから。

チンパンジーの方がまだ、マシじゃないかと思うよ。』

『それじゃ、忍葉様も、美月様も大変でしたね。』

『そうだな。』

それにしても、美咲は酷かった。
幼稚園児かと何度も思った。

紫紺様が、忍葉様の辛い感情をずっと感じてこられて、心理学を勉強されていたから、

法的な対処ができるように弁護士の資格を取り、花姫会で両親に問題がある花姫たちの担当を仕事の合間にさせて貰ったり、

その家族から、親子問題を抱える子どもや、妻や夫の場合もあったが、
色々な依頼を受け経験を積んできて良かったとは思うが、あの調子じゃまだまだ、ちゃんと自覚が持てるには時間がかかるだろうな。

まあ、母親同様、あのまま変わらず、大人になってしまうこともあるだろうが…。

できるなら、真っ当に社会のルールを守って生きれるようになって貰いたいものだが…。

それにしても、一つ伝えたいことを伝えるのに、あれだけ話さないといけないのは、人間と会話している気がしなかったな。

まだ美咲はいい。

問題は、母親と、父親だ。

父親は、損得勘定で今は、逆らうより従った方が得と思っている様だが、

あの母親が暴走するだろうから、
こちらが絶縁の方向に舵を切るよりない。
そうなれば、同じように暴走するだろうな。

暫く面倒事が続くだろう。

いずれ万策尽きるだろうから、こちらは対処するのみだが。

黄竜門と朱雀門を相手にして、忍葉様や美月様に近寄れたりするわけがないのだから。

最初から家族を無視して、連絡を経ち、会わさないようにすることは、簡単にできるが、

忍葉様と美月様がご両親や美咲様を、

どんな人物か理解して親を諦めながら、自分を見つめる時間も必要だろうし、

両親に娘を取られたと訴えられたら、権力がある分、こちら側の風評が悪くなる。

何にも悪くないのに不快な話しではあるが。

神獣人はどうしても、権力、財力、能力ともに飛び抜けているから、悪評の標的になりやすい。

きちんと段取りを取って、家族側が、花姫に危害を加えたり、付き纏ったりした跡を残して貰っておいた方が、こちらの正当性を示せ、後々の面倒が無い。

花姫になったお2人に怪我などされるわけにはいかない。早く諦めて大人しくなってくれるといいが…。