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祖父母、紗代ちゃんと和君、美月と藍蓮様が集まると、病室は、一気に賑やかになった。

最初は、緊張していたものの、徐々に緊張も解け、忍葉は、皆と過ごす時間を楽しめた。

ずっと側に、紫紺様が居て、何をしていても、愛しげな目を向けられるのは、戸惑いと恥ずかしさでどうにかなりそうだったけれど、前のように恐怖で逃げたいとは、思わなくなっていた。

幼かったから記憶は、殆ど無いけれど、おじいちゃんたちが持って来てくれたお弁当を食べると不思議と懐かしい感じがした。

記憶の底にずっと押し込めてきた温かな思いが蘇ってきたら、
戸惑いや恥ずかしさや迷いだけじゃなく、
紫紺様の花姫になることにちゃんと向き合おうと前向きな気持ちが出てきた。

お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが、私と美月に、いつでも来ていいし、いつまでいてもいいと言ってくれた。

やっぱり直ぐに、紫紺様の家に入るのは決められない。

美月は、とりあえず、退院して私と一緒に柘榴様のところに来て考えたら。
と言っていた。

その通りだと思った。

寮に住む予定だった時なら、こんな高そうな病院に入院しているより、
美月と藍蓮様の言葉に甘える方を迷わず選んだと思う。

だけど、状況が変わった今、それを決断してしまったら、紫紺様の花姫になる未来に、自分から向かって動いて行ってしまう。

そう思うと怖気づいてしまった。

はあ〜。私は、だらしがないな、何にも決められない…

その時、スマホが鳴った。

美月かなと思って、ベッドサイドに置いてあるスマホをとって見たら、
登録していない番号だった。

誰だろう?

スマホ初心者の私に、道忠さんが、登録していない番号と非通知からの着信は出ないように。
と念を押して言われていたから、放っておいたけど、何度も鳴る。

間違えて掛けているのかもしれない。それなら出て違いますよと言った方が、親切だし、鳴り続ける音を聞いていなくていいと思って、電話に出ることにした。

『やっと繋がった。お姉ちゃん‼︎

『えっ?なんで美咲が掛けてくるの?』

『そんなことどうでもいいでしょ‼︎お姉ちゃんが、花姫会と警察に話したせいで私が花姫じゃなくなったじゃない。
花紋も出ないくせに花姫だなんてあるわけないでしよ。早く、麒麟の当主に間違いだって言って、元に戻すように言って‼︎
それから、翔と会えるようにしてよ。』

『えっ?翔様と会えないの?』

『お姉ちゃんがそうしたんでしょ‼︎』

『私は何もしていない…。』

『ならどうして私がこんな目に遭うのよ。』

美咲は何を言っているんだろう…?

『それは、美咲がしたことが原因じゃないの?』

『お姉ちゃんが、花紋も出ないのに、花姫だってチヤホヤされてるからでしょ。
立場を教えてあげたんじゃない‼︎』

『本気でそんなことを言っているの?
そんな馬鹿なことの為に、本当に翔様を騙したの?』

『馬鹿なことですって‼︎』

美咲は、本当にわからない…んだ…とはじめて気づいた。

『なんで…?美咲にとって翔様は、大事な人じゃなかったの?』

『何言ってるの。大事に決まっているでしょ。私の花王子なんだから‼︎』

益々、美咲がわからない…

『なら何で‼︎なんで、大事な翔様を、私の立場なんかをわからせるために、騙したのよ‼︎

私なんて美咲にとって何の価値もないでしょう。』

『欠陥品のお姉ちゃんが、私と同じ立場になろうとしたからでしょ。』

『……美咲は可哀想だし、心が無さ過ぎて恐い…。』

『何っ…

電話を切ってしまった。

欠陥品のお姉ちゃんが、木霊のように耳に残った。