♢♢♢♢♢

美月が藍蓮と車で、忍葉の病院に向かっている時、スマホが鳴った。

画面を見ると母親からだった。

一瞬、迷ったものの電話に出ると、

『あ〜良かったわ、美月。
美咲が大変なのよ。千虎家が美咲を花姫として迎えないって言って。だから、美月は、帰ってらっしゃい。中央区管内に私たちと住むって藍蓮様に頼めばいいわ。そしたら、美咲も、中央区管内の学校に通える。翔君と会える機会ができれば、きっとやり直せるはず。いいわね。美月、すぐ帰って来るのよ。』

と母親は捲し立てる様にそう言った。

『何を言っているの?お母さん。そんなこと出来るわけないでしょ。』

『大丈夫よ。美月。
美月は花姫なんだから、藍蓮様は美月の頼みならなんでも聞くわ。
姉なんだからそれくらいして当然でしょ。』

『……馬鹿なこと言わないで‼︎』

『馬鹿なことじゃないでしょ‼︎家族のためなんだから。』

『…もう私、お母さんとも、お父さんとも、美咲とも関わりたくないから…。

『何言ってるの私たちは家族よ。関わりたくないなんて、あるわけないでしょ。』

『………もういい。こんなことで電話して来ないで‼︎』
そう言って美月は電話を切った。

顔を上げると心配そうに見ていると藍蓮様と目が合った。

『お母さんが、家に帰って来いって。
中央区管内にお母さんたちと住めるように藍蓮様に頼めって。何を考えているのかも受けてわからない…、何で、お母さんは、ああなの?』

興奮し過ぎて泣きながら訴える美月を藍蓮が優しく撫でていた。

電話を切ってから、美月のスマホは、鳴り続けていた。

藍蓮が、スマホをとって操作すると、音が止んだ。

『早く家族からの連絡が来ないようにしないと。』

藍蓮は、呟く様にそう言うと、

『美月ちゃん。美月ちゃんが、警察と話しをする忍葉ちゃんと一緒に居た時に、道忠に今後の美月ちゃんの家族の相談をしてたんだ。

美咲ちゃんが花姫じゃなくなれば、美月ちゃんに何が言って来ないとも限らないと思って…。

法的な対処も必要かもしれないと思ってね。
道忠は、紫紺君の秘書だけど、弁護士の資格があって、花姫の家族の問題は得意なんだよ。

今後のことは、ちゃんと美月ちゃんと相談しながら、美月ちゃんが家族に振り回されないで、生活出来るようにしていくから、まずは、忍葉ちゃんの所へ行かないか?

お祖父ちゃん、お祖母ちゃんや三枝夫妻に会うのを楽しみにしていただろう。

楽しい時間を過ごせば、立ち向かう元気も湧いて来るよ。』

『…そうだね。塞ぎ込んでも、何も変わらないね。』

そう言うと、藍蓮が安心したように微笑んだ。

ここに居られことを私は一番、大事にしよう。と美月は、思った。