朝食が済んだら、直ぐ、紫紺様が神蛇先生と一緒に来た。

『よく眠れたかい?忍葉君。』

『はい。朝…、忘れていた小さな頃の夢を見て…、凄く気分良く目が覚めました。』

『そう。それは良かった。記憶が整理されていっているようだね。』

『今日はね、忍葉君…』

『俺から話す。』

『そうかい。じゃ、頼んだよ。』

何事かと身構えると、紫紺様が、

『そう心配することは無い。大丈夫だ。』
と言って頭をポンポンと優しく叩いた。

力がスッと抜けた。

紫紺様が口を開いた。

『実は、花姫会が今回の件で、警察を、呼んだんだ。』

『えっ?そんな騒ぎになっていたの?』

『家、家は、どうなっているの?』

『昨日の夜、花姫会や警官が、家族に事情を聞いてる。

警察を入れても、内々で済ますようサイレン鳴らしたり、家の前を制服警官がうろついたりしていないから、外に騒ぎは漏れてないし、今頃は、静かなものだと思う。

内側は、騒ぎがあったことは、周知の事実になるが…。』

周知の事実…と聞いて、
なんで美咲はあんなことをしたんだろう?
と改めて思った。

こんな騒ぎになるとまでは、具体的にわからなくても、大変なことになるのは簡単に想像できるに…。

『それで、忍葉。昨日の夜は、忍葉には、負担が大きいと神蛇が、忍葉に事情を聞くのは、今日の朝まで待つよう話をつけていたんだ。』

『えっ‼︎待って貰っていたの?
警察の方に迷惑を掛けたんじゃないの?』

『そんなことは、気にすることじゃない。

それに、今日にしたことで、昨日、美咲や両親に事情を聞いた警官2人と龍咲が、忍葉に事情を聞くことになったから、話を擦り合わせる時間が無くなって、かえって手間が省けるさ。』

『そうなら良かったけど…。』

『今、事情を聞きに警官が2人来ているが、昨日のことを話せるか?』

2人も…かと不安になったけど、
『うん。話せる。大丈夫。』
と答えた。

『それから、今回の美咲が起こしたことは、単に花姫の忍葉に害を与えただけじゃないのは、わかるか?』

『……何が言いたいかわからない。』

『美咲は、忍葉を花姫として認められないようにするために、自作自演をして花姫である自分に危害を加えたと言っているだろう?』

『あっ…。』

『悪質なんだ。
事実が明らかになったら、
千虎家は、美咲を花姫として迎え入れないと決断するだろうし、
麒麟の当主が、神獣人の総意として、
美咲を神獣人一族の花姫として認めない。
と花姫会にも、千虎家にも通告するだろう。

それが浅井家にも伝えられる。

そうなったら、美咲や家族が、
忍葉に何をしてくるかわからない。

警察に事情を話した後、
道忠と一緒に対応を話し合いたいがいいか?』

これ以上何をするというんだろう…と思いながら、だからって何もしないわけにもいかないんだろうと思って、

『わかった。』
と答えた。

『そうか、良かった。
忍葉が大丈夫なら、今から警官を呼ぶがいいか?』

『大丈夫。呼んで。』

『ああ、わかった。櫻葉、呼んできてくれ。』

『かしこまりました。』
そう言って櫻葉さんが出て行った。

『警官と神蛇と話して、龍咲の他に、
医師の神蛇と俺と家庭の事情をよく知る妹の美月も一緒に立ち会うことになったから、心配はいらない。』

『えっ?美月も。昨日、凄くショックを受けていたのに。』

『昨日の夜、忍葉が警察と話すときに、立ち会ってくれないかと頼んだら、

忍葉のことが心配だし、何があったかちゃんと理解して前に進んで行きたいから、立ち合いたいと美月は言っていた。』

『そんなことを言っていたんだ…。』

美月は、どんどん前に進んでいる。

それに、知らないのは私ばかり…だと思った。

気遣いなのはわかる。

倒れたり色々してる今、

気を使わないで、前もってわかっているなら、皆と同じように教えて。

と言っても、きっと無理なんだろう…。

自分も大丈夫か自信がないし…、

早く色々なことに整理をつけて、大丈夫だからと言えるようにしないと。

そう思った。