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忍葉の話が一通り済んだ頃、
浅井家の家の中は、騒然としていた。

翔からの連絡を受け、花姫会の千景と龍咲が駆けつけ、
花姫会から連絡が行ったため、私服の警官2人までやって来たからだ。

『娘たちのために騒ぎになりたくない。』
と訴える母親の意向を受けた翔が、花姫会にその旨を伝えたため、サイレンも鳴らされることなく、警察がやって来たため、家の中とは違い外は、静かだった。

千景、龍咲、と警官2人が、駆けつけると、
美咲を抱き寄せている翔に千景が
『翔様、白虎一族の当主 琥珀様がお呼びです。直ぐに、向かって下さい。』
と告げた。

『何を言っている。こんな傷ついた美咲を、置いて行けない。』

『えっ。翔、何処か行くの?』

心細そうに美咲が、翔に縋り付いて呟く。

心配そうに美咲を見つめる翔に、

『いえ。ご命令です。直ぐ、向かって下さい。外に迎えの車が来ていますから。』
と、キッパリと千景が言った。

千景の言葉に、苛立ったのか?ギリッと唇を噛むと、翔は、美咲を抱き寄せ、

『千景たちが帰ったら、電話して。』
その優しく声を掛けると、美咲を離し、立ち上がって出て行った。

『どうして翔は、出て行ったの?何処へいったの?』
と興奮している美咲を千景が落ち着かせた。

気を取り直した美咲と両親に、忍葉が救急車で桜坂総合病院に搬送されたことが告げられた。

皆が一様に驚きの表情をし、

『えっ、リビングをお姉ちゃん通った?』

『いつの間に出てったの?』

『なんで救急車なんだ?』

口々に呟いた。

『忍葉様が火傷を負って気を失っているそうですが、何かご存知ですか?』

『えっ!火傷…翔様が手を伸ばしたら、バンッと音がしてタンスが燃えたけど、忍葉はなんとも無かったぞ。
火って言ったけど、すぐ消えると翔様が言って、その場を後にしたからな。何があったんだ?』

『火傷なんて…わからないわ。』

『私も知らない。』

『タンス?忍葉様の部屋のタンスですか?』

『あー、そうだ。美咲が忍葉を呼びに行ったらすぐに、悲鳴が聞こえて…』

『お父様、後で状況をお聞きしますので、お待ち下さい。』

『忍葉という子の部屋を見せて貰っていいですかね。』
警察官の1人が口を挟んだ。

『あー、いいよ。』
と父、清孝の返事を聞き、
警察官一人と龍咲が、忍葉の部屋へ向かった。

千景がまた、話し始めた。

『こちらに着く頃の連絡では、まだ、忍葉様は、目を覚まされていないようでした。
火傷などの怪我は、すぐ霊力で治療されたようです。他に大きな怪我はない様ですが、念のために検査をしたそうです。
結果はまだわかりません。
今日は、入院することになると思います。』

『そうですか…。』

『もう一つ、先に伺いたいことがありますので、宜しいですか?』

『火傷をして、気を失っている忍葉様を見つけたご夫婦が、救急車を呼んだそうですが、
そのご夫婦が忍葉様をご存知の様ですが、
三枝紗代子、和彦というご夫妻だそうですが、ご存知ですか?

『さえぐさ?知らないわ。ね、貴方知ってる?』

『知らないな?さえぐさ、なんて珍しい苗字聞いたことないよ。』

『私も、知らない。』

『そうですか。』

何があったかを、千景と警官の1人が聞き始めた。
忍葉の部屋を見に行った龍咲と、もう1人の警官が戻ると、そこに合流した。

事情を聞き終わると、
美咲が着ていた服や引き裂かれた服とハサミを持って警察官が帰って行った。

『お姉ちゃんはどうなるの?』

『忍葉様から事情をお伺いしていない今はなんとも言えません。』

『何で?翔だって、お父さんも、お母さんも、見てたのに。』

『忍葉は、桜坂総合病院って言ってましたよね。今、どうしていますか?
病院に様子を見に行きたいんですが…、美咲を置いていくのは心配ですし…、あんなことがあって美咲を連れて病院に行くわけにも行きませんから…、貴方どうしましょう?』

『そうだな…。どうするか…』

『お姉ちゃんきっと、翔が凄く怒ったのを見て、自分のしたことを誤魔化そうとワザと火傷をしたのよ。翔は、タンスの中しか燃やしていないもの。』

『何か分かれば、連絡致しますので、今日は、自宅に居て下さい。』

『そうですか?それならお願いします。』

『忍葉は、私や美咲や家族が、忍葉のために言っていることを、酷いことをしていると思ってたんですね。それでも、あの子は、大事な娘ですから、花姫じゃなくなったら、寮には入れず私たちが引き取りますし、事件になんかしませんから。』
と母親が訴えた。

『大変だったと思いますが、今日は、ゆっくりお休み下さい。明日には連絡させて頂きますから。』

千景がそう言うと、千景と龍咲は、帰って行った。