♢♢♢♢♢
紫紺は、取引先のレセプションパーティに、秘書の道忠と来ていた。
歓談中、急に、哀しみとともに、ハッキリと『家に帰りたい。』
と忍葉の声が聞こえた。
歓談をなんとか失礼がないように切り上げた紫紺は、足早に会場を出て行く。
急に様子が変わった紫紺を不審に思いながら、道忠も後を追いかけた。
忍葉に何かあったんだ。
浅井家に急ごうと車に乗り込むと、
運転手に、
『『鬼頭、浅井家に急いでくれ。』
と告げた。
『家に帰りたい。』
と聞こえた。
忍葉が家と言えば…と三枝夫妻を思い浮かべた。その時、紫紺のスマホが鳴った。
こんな時に誰だと思いながら、表示画面を見た紫紺は慌てて電話を受けた。
『あっ、紫紺様ですか?』
掛けてきた相手の慌てたような様子を感じ取り、紫紺の表情に緊張が走った。
『そうだ。何かあったのか?』
『忍葉ちゃんが、火傷をして、今、私たちと救急車に乗って、桜坂総合病院に向かっています。』
『どういうことだ?』
『それが私たちも何がなんだか…、信じて貰えるかわかりませんが、聞いて貰えますか?』
『あー、勿論だ。話してくれ。』
『主人とTVを見ていたら、急に、サッシが開いて、狛犬がリビングに入ってきて…、背に乗せた忍葉ちゃんを下ろして、火傷をして気を失っている。桜坂総合病院に行けと。
それで今、主人と救急車に乗って、忍葉ちゃんと病院に向かっているんですけど…信じて貰えます?』
窓の外を見ながら、
『ああ。獅子みたいな顔をした狛犬か?』
『ええ。ええ。どうしてそれを。』
『今、俺の所に来ている。』
『あー、そうなのね。ポチに何があったの?って聞いたら、
「花姫が、お前たちを思い浮かべて、家に帰りたい。と言う声が聞こえたから、連れて来た。話している暇は無い。行く所がある。」
そう言って、何処かへ行ってしまったけど、紫紺様の元へ呼びに行ったのね。』
『ポチ?昨日、話しをしていた松山神社の狛犬のポチか?』
『そう、そうです。』
『忍葉は、まだ、目を覚さないか?』
『ええ。眠ったままです。』
『何があったかはわからないんだな。』
『はい。』
『わかった。連絡ありがとう。すぐ病院に向かう。では、後で。』
電話を終えると、
運転手も、さっきの狛犬に気づいていた様で、
『珍しくデカイのいましたね。』
と言った。
『鬼頭、桜坂総合病院に行ってくれ。』
『えっ。あっ。はい。桜坂総合病院ですね。』
いつの間にか、電話をしていた秘書の道忠が、電話を終え、話しかけて来た。
『桜坂総合病院ってまさか忍葉様に何か?』
『三枝夫妻から今、電話があった。火傷を負って気を失っている忍葉を桜坂総合病院に搬送中だと。』
『えっ?今、花姫会から、
千虎家の翔坊ちゃんが、花姫に忍葉様が襲いかかったと連絡が来たと…。浅井家にいるはずの忍葉様がどうして三枝家に?』
『忍葉の幼い頃の知り合いの狛犬が、忍葉の声を聞いて、三枝家に連れて行ったようだ。』
『狛犬ってさっきの、金色のくせっ毛でもじゃもじゃの?』
『ああ、そうだ。花王子よ、お前の花姫が火傷を負っている。桜坂総合病院に急げ。と言っていたぞ。聞こえなかったか?』
『いえ。私は、何も。』
『そうか。俺にだけ、念を送ったか。』
『それより火傷とは?忍葉様に一体何が?』
『それは、わからない…。』
『あの妹、何かやりそうだと思いましたが、案の定、やらかしてくれたみたいですね。』
『そのようだな。それより、忍葉の状態が酷くなければいいが…。』
紫紺は、取引先のレセプションパーティに、秘書の道忠と来ていた。
歓談中、急に、哀しみとともに、ハッキリと『家に帰りたい。』
と忍葉の声が聞こえた。
歓談をなんとか失礼がないように切り上げた紫紺は、足早に会場を出て行く。
急に様子が変わった紫紺を不審に思いながら、道忠も後を追いかけた。
忍葉に何かあったんだ。
浅井家に急ごうと車に乗り込むと、
運転手に、
『『鬼頭、浅井家に急いでくれ。』
と告げた。
『家に帰りたい。』
と聞こえた。
忍葉が家と言えば…と三枝夫妻を思い浮かべた。その時、紫紺のスマホが鳴った。
こんな時に誰だと思いながら、表示画面を見た紫紺は慌てて電話を受けた。
『あっ、紫紺様ですか?』
掛けてきた相手の慌てたような様子を感じ取り、紫紺の表情に緊張が走った。
『そうだ。何かあったのか?』
『忍葉ちゃんが、火傷をして、今、私たちと救急車に乗って、桜坂総合病院に向かっています。』
『どういうことだ?』
『それが私たちも何がなんだか…、信じて貰えるかわかりませんが、聞いて貰えますか?』
『あー、勿論だ。話してくれ。』
『主人とTVを見ていたら、急に、サッシが開いて、狛犬がリビングに入ってきて…、背に乗せた忍葉ちゃんを下ろして、火傷をして気を失っている。桜坂総合病院に行けと。
それで今、主人と救急車に乗って、忍葉ちゃんと病院に向かっているんですけど…信じて貰えます?』
窓の外を見ながら、
『ああ。獅子みたいな顔をした狛犬か?』
『ええ。ええ。どうしてそれを。』
『今、俺の所に来ている。』
『あー、そうなのね。ポチに何があったの?って聞いたら、
「花姫が、お前たちを思い浮かべて、家に帰りたい。と言う声が聞こえたから、連れて来た。話している暇は無い。行く所がある。」
そう言って、何処かへ行ってしまったけど、紫紺様の元へ呼びに行ったのね。』
『ポチ?昨日、話しをしていた松山神社の狛犬のポチか?』
『そう、そうです。』
『忍葉は、まだ、目を覚さないか?』
『ええ。眠ったままです。』
『何があったかはわからないんだな。』
『はい。』
『わかった。連絡ありがとう。すぐ病院に向かう。では、後で。』
電話を終えると、
運転手も、さっきの狛犬に気づいていた様で、
『珍しくデカイのいましたね。』
と言った。
『鬼頭、桜坂総合病院に行ってくれ。』
『えっ。あっ。はい。桜坂総合病院ですね。』
いつの間にか、電話をしていた秘書の道忠が、電話を終え、話しかけて来た。
『桜坂総合病院ってまさか忍葉様に何か?』
『三枝夫妻から今、電話があった。火傷を負って気を失っている忍葉を桜坂総合病院に搬送中だと。』
『えっ?今、花姫会から、
千虎家の翔坊ちゃんが、花姫に忍葉様が襲いかかったと連絡が来たと…。浅井家にいるはずの忍葉様がどうして三枝家に?』
『忍葉の幼い頃の知り合いの狛犬が、忍葉の声を聞いて、三枝家に連れて行ったようだ。』
『狛犬ってさっきの、金色のくせっ毛でもじゃもじゃの?』
『ああ、そうだ。花王子よ、お前の花姫が火傷を負っている。桜坂総合病院に急げ。と言っていたぞ。聞こえなかったか?』
『いえ。私は、何も。』
『そうか。俺にだけ、念を送ったか。』
『それより火傷とは?忍葉様に一体何が?』
『それは、わからない…。』
『あの妹、何かやりそうだと思いましたが、案の定、やらかしてくれたみたいですね。』
『そのようだな。それより、忍葉の状態が酷くなければいいが…。』