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『花姫と言われても全くそうは思えないし、花木姫なんてとんでもないとしか思えない。

お母さんだって、美咲だって嫌がる。

ちょっと前までは、ずっとお母さんの支配下で、大人になっても、家から出られず、
小間使いのようにずっと家事をして、生きるんだと思ってた。

この間、龍咲さんの話を聞いて、
寮のある学校なら入れるかも知れないと思った。

美咲も美月も、花姫になって、今の家を出るなら、私は、中央区菅内の家には行かずに、
花姫だと言うことは、黙ったまま、寮に入ろうと思う。

自分と向き合うことは、それからでいいと思う。

今は、いつどうなるか?
先が全く見えない、
地のない大地に立っているみたいだから。

まず、寮に入りたい。

誰かに…、親に脅かされず、
住む場所があって、学んで生活出来ること。
それが欲しい。

そしたら未来に希望がもてる。

それがないのに何も考えられない。』

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『うん。忍葉君の気持ちと考えはわかったよ。

前は、お母さんの支配下から、出られないと思っていたけど、寮なら入れると思ったのは、君にとって大きな変化だよね。

そのことは良かったと思うよ。

きっと周りの神獣人も花姫会も、
僕も神獣人だけど…ね。

花姫が、寮に入るって言ったら、皆んなが目を剥いて止めようとするだろうけど…。
クククッ。

だけど、それは、忍葉君にとって、母親への始めての反乱だよね。きっと。

自分の意見など言わせて貰えなかっただろうからね。

言ってみるといいと思うよ。
忍葉君にとって、今、持てた希望を主張することは、凄く大事なことだと思うからね。

だけど、花姫であることを黙っていることは、僕は、賛成できないな。

そうしたい気持ちだということはわかるよ。
気持ちにいい悪いはないからね。
そこをとやかく言う気はないけど、

花紋が出ていなくても、忍葉君は、花姫なんだ。それも、上位の花王子のね。

百歩譲って、『上位の』を忍葉君の気持ちの整理ができるまで少し言うのを待つことは、いい。
それでも、少しの時間を、百歩譲ってだよ。

花姫だと言わないことは、できない。』

『藍蓮君は、どう思う?』

『忍葉ちゃんごめんね。
僕も、花姫だと言わないことは反対だよ。
これは、花姫会も、「うん」とは、言わないと思う。

『上位の』を忍葉君の気持ちの整理ができるまで少し言うのを待つは、
百歩譲ってなら…僕も賛成できるけど…。

だけど、寮は駄目‼︎』

『プハッ。過保護だなぁ。』

『やっ、ダメでしょ。上位の花王子の花姫の上に、美月ちゃんのお姉ちゃんだよ。

花紋が出て忍葉ちゃんが寮に入ってたら、忍葉ちゃんの花王子、般若のように怒るよ。絶対‼︎』

『美月ちゃんも、中央区管内に両親と美咲ちゃんと住む気はないみたいけど…、

だからって、今日花姫になったばかりで、僕の家に住むことは考えられないみたいだし…。

僕も美咲ちゃんの年齢を考えると、
今、一緒に住むのは…。

母の家に住んでくれたらいいと思うんだけど…。
そしたら、忍葉ちゃんも一緒に住んだらいいんだし…。これは僕の意見ね。』

『えっ?花姫って、中央区管内に両親と住むか、花王子の家or実家に住むかの2択しかないの?』

神蛇(かんじゃ)先生と龍咲さんが、なんとも言えない微妙な顔をしている。

『無いね…。』

『なんと言いますか…無いですね…。』

『美咲が言ってたから、そうなんだけど…。花姫になっていきなりリアリティが出た。
えっ?どうしよう…。』

美月は、花姫になった現実を理解したみたいで、プチパニックになったみたいだ。

『美月ちゃんは、今日、花姫ってわかったばかりだから、これから一緒に考えていこう。

忍葉ちゃんも、選択肢に、美月ちゃんと住むことを入れてくれないかな?』

『私も、お姉ちゃんが寮に入るのは嫌‼︎
自分すら何処行けばいいかわからないのに、嫌って言っても、じゃぁ、お姉ちゃん何処に行くの?ってわかんないけど、お姉ちゃんには、ちゃんとした家に住んで欲しい。』

『あー、家がまともならこんなに悩まなくていいんだろうな…。』

『はあー。』
美月はガックリ肩を落とした。

どんなに何とかしようと先を考えても、

私の前には、いつも、両親が高い壁のように立ち塞がって何処も行き止まりにしている。

美月も一緒なんだなと思った。


それでも、これからは違う。

美月には、花王子という、
あの両親でも、口が出せないだろう存在が出来たのだから。

『忍葉ちゃんは、皆んなの意見を聞いてどう思う?何か気持ち変わった?』

『花姫のことを、言わなきゃいけないことは、わかりました。
でも、「上位の」は、言わないで欲しい。


それから、やっぱり寮が一番いい。

中央区管内の学校で寮のある学校は、無いですか?
中央区管内なら、花姫が、家族と住んでいいなら、中央区管内なら、花姫でも寮に住んでいいんじゃないですか?

自分が、花姫だとは、思えないけど、
花姫だと言うなら、
私には、親と住む選択肢一つしかなくなる。

それが無理だったら…』

『そんなに思いつめなくても、さっき言ったように、美咲ちゃんと…

藍蓮様の言葉を遮って、神蛇先生が話し出した。

『忍葉君の言うことは、最もだよ。
龍咲君。中央区管内の学校で寮があるところはあるかい?』

『はい。九十九學院お一つですが。』

『九十九學院なら、元々、神獣人のために作られた学校だから、花姫が、寮に入ることを了承してくれるんじゃないか?』

『事情を、お話すれば可能性はあるかと思います。』

もう、行き止まりなのかと思ったから、
それを聞いて、ホッとした。