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『他にも、いくつか訊きたいことがあるけど、大丈夫かい?』

『はい。』

『君のお母さんがね、家族で出掛けるときや、緊張するような予定があるときに、忍葉君は、具合が悪くなるって、見た目のことを気にしているから、
人目につくことや、出掛ける服のことなんかを悩んで考え過ぎるからじゃないか?
って言うんだけどね。
君はそのことについてどう思う?』

『思うことを言ってもいいの?』

『もちろんだよ。君の診察だからね。君が思うことを言ってくれないと困っちゃうよ。』

『確かに、家族で出掛ける時や、入試の時とか吐いたことはあるけど…、
緊張したり、悩んで具合が悪くなるときは、
頭痛だったり、腹痛で、家族に言ったりしないから皆んな知らない…。
それに…』

言いかけて躊躇ってそれ以上、何も言えなくなった。

『お姉ちゃん。お姉ちゃんが倒れて、パニックになって、色々な思いが溢れてきちゃって…。お姉ちゃんが寝ている間に、家の中のことを藍蓮様と龍咲さんに色々、話したから。

もし家のことを話しちゃいけないと思っているなら…だけど、お姉ちゃんの思うように話して大丈夫だよ。』

美月は何を話したんだろう?
思うように話すってどこまでいいんだろう?
そんなことを思って躊躇ったけど、意を決して口を開いた。

『…見た目のことを悩んでいるか?わからない。自分の見た目を悩む暇がなかった。

ずっと、お母さんが私の見た目を気にしてたから。私は、そんなお母さんを気にしてきた。

服も、出かけることもそう。着させて貰えないし、学校以外、外に出れない。
その息苦しさに悩んでも、それ以外に、悩むことすら私にはできない…』


長い沈黙の後、もう口を開かないと思ったのか?神蛇(かんじゃ)先生が口を開いた。

『そうなんだね。この間、具合が悪くなった時も、吐いたそうだね。』

『はい。急に吐き気がして…。』

『そう。急に、吐き気がする時の前は、何をしていることが多い?変わったこととか、思い当たることとかある?』

『この間は、憂鬱だった…。
これから先のことを考えて…。

あと、意外だった。

お母さんは、私を都心の中央区に行かせたりしないし、花姫かどうかの確認なんて絶対させたくないと思ってたから。
あっさり行かせる感じで、それが意外だった。

それと…お母さんが、珍しく機嫌が良かったみたいで、美月と私に飲み物を用意してくれた。

一瞬、神蛇先生と藍蓮様の顔つきが変わったように思えて、黙ってしまった。

『どうかしたの?続けて。』

と藍蓮様が穏やかに言った。

気のせいだったのかな?と思いながら、話しを続けることにした。

えっと…、そう言えば、…吐く時は、お母さんが、いつもと違う時かも、いつもと違うことを私にさせたり、行かせたりする時…、
私いつも、お母さんは、ホントに〜へ私を連れて行くのかなとか、思ってる。』

『飲み物は、何を用意してくれたの?』

『えっ?えっと、美月はアイスティー、
私は、アイスカフェ・ラテだったと思う。』

『お母さんはいつもは飲み物を用意しないの?機嫌がいいときだけ?』

『飲み物を用意するのは私の係だから、お母さんは、滅多にしない。

機嫌…良かったのかなぁ?いつもと違うことをするってお母さんがいう時に、決まって飲み物を作って、今日は、〜するから、ちゃんとするのよ。って言うけど、機嫌が良かったのかな…。』

『お母さんの機嫌がいい時は、どんな感じなの?その時とは違うの?』

『美咲と話すときは、優しい声で、よく喋って凄く笑ってて楽しそう。
私には向けない…。全然違う。』

『今日、倒れたよね。今日と、吐くときは、同じ?違う感じ?』

『えっ?今日みたいなことは、はじめてだよ。』

『そう。今日みたいなことは、初めてなんだね。じゃ、いつもの具合いが悪くなるのと、違うね。』

『うん。全然違う。』