3時過ぎ、お母さんたちが、帰ってきて、一気に騒がしくなった。
機嫌が良くなった美咲のはしゃぐ声が、部屋まで聞こえてきた。
お母さんが、部屋に入ってきた。
『忍葉、体調、もういいわよね。』
『はい。』
『5時頃、花姫会の方がいらっしゃるから、10分前には下に来て頂戴よ。』
それだけ言うとお母さんは、出て行った。
時間になってリビングに行ったけど、夕飯の支度や、洗濯物を畳んだり、掃除をしないで、リビングに居るのは、自分の居場所が見出せず、居心地が悪かったので、割とすぐ、玄関のチャイムが鳴ってホッとした。
花姫会の方は予定より早く来るようだ。
お母さんが、玄関に迎えに出てすぐ、客間に案内した。
リビングに戻って来ると
『忍葉、お茶を淹れて。皆んなは、一緒に客間に行きましょう。』
と言って客間にみんなと向かった。。
これを出したら、私は、部屋に戻るんだろうなと思っていたら、
お茶を出している時に、
『家族全員に話があるそうだから、出し終わったら忍葉も、座りなさい。』
とお母さんに言われて、座布団に座った。
私が、座るのを見届けると
『ご家族の方が揃ったようなので、ご挨拶させて頂きます。
私が、虎伏千景、右にいるのが、
龍咲 楓、左が、櫻葉 雪菜です。』
とおっしゃった。
3人とも、其々、年齢も、系統も違うけど、綺麗な人ばかりで面食らってしまった。
『娘たちの母の浅井 晶子と父の清孝、
娘の美咲、美月と忍葉です。
これから色々、宜しくお願いします。』
『私の苗字、虎伏は、皆様、覚えにくいようなので、千景と名前の方をお呼び下さい。
こちらの方が、朝、お会いできなかった長女の忍葉様ですね。』
『はい。今日は、娘が迷惑掛けまして…。』
『体調は、誰でも崩しますし、迷惑ではありませんよ。お気になさらず。』
『もう体調は、宜しいのでしょうか?』
『ええ。もうすっかりいいみたいで。』
『そうなんですか?忍葉様。』
『あっ、はい。お昼を食べて眠ってからは、もう、いいです。』
『そう聞いて安心いたしました。元気になられた様で良かったです。』
とまるで本当に安心したようにホッとした表情をした。
『お母様が忍葉様のことを大変心配されていると伝えましたら、
花姫会会長の柘榴様が、
直々に、忍葉様にと、
洋服をご用意されましたので、花姫会館にいらっしゃる時にお召し下さい。』
『まあ、忍葉なんかに…、勿体ないことをして頂いてありがとうございます。
忍葉も、お礼を言ってね。』
『あっ、ありがとうございます。』
『それでですね。話すことが幾つかありますので、本題に入らせて頂いて宜しいでしょうか?』
『皆んないいわよね?』
と言って家族の顔を見る。
お母さんは、今日、玄関で、何を言ったんだろうか?とか、
洋服を貰ったことでまた嫌味を言われるんだろうな、気が思いな…と考えていたので、
頷くのが家族より一足遅れ、お母さんに睨まれた。
皆が頷くのを確認すると、
『お願いします。』
とお母さんは答えた。
『それでは、最初に、花姫会館に来て頂ける日取りの確認ですが、明後日の火曜、朝10時にお迎えにあがる予定ですが、宜しいでしょうか?』
『ええ。娘たちは、明日、終業式で、明後日から夏休みですからね。早い方がいいということだったので。いいわよね。みんな。』
みんな驚く様子もなく、頷いている。
みんなの様子から、知らされていたことがわかった。お母さんが電話で予定を決めたんだろう。いつも、私だけ、蚊帳の外……。
『いい。いい。明日でもいいくらいよ。』
『学校があるから仕方ないでしょ。』
『終業式くらいいいのに…。もう、お姉ちゃんが吐いたりなんかするから…。』
『美咲は、早く花王子に会いたがりまして…。』
『花姫様は、皆、そうなりますね。
それでは、明後日の火曜、朝10時にお迎えにあがります。』
『宜しくお願いします。』
『では、電話で質問されました。
花姫様にご姉妹がいる場合、花姫様かどうかの確認が済むまでは、花王子様と花姫様は会ってはいけないという神獣人と花姫会の決まりについてですが、そういった明確な決まりはございませんが』
『えっ。電話で話したとき、決まっているから会えないって翔が言ってたよ。』
『翔…、美咲様の花王子の千虎 翔様ですね。』
『はい。そうです。』
『明確な決まりはございませんが、翔様が、そうおっしゃるのは、理解できます。
これからお話しする内容は、
花姫様を通して、これから神獣人一族と関係を築かれるご家族様には最初に、理解して頂いた方が、良いことなので、
花姫様とそのご家族様に必ず最初にお会いした日にお話しさせて頂いております。
電話でお応えしなかったのも、皆様に直接お話しするためです。
ご存知かと思いますが、
神獣人には、人間にはない特質が、いくつかございます。
まず、一番重要になる神獣人の2つの特質とその関係性について、話させて頂きます。
一つ目は、
神獣人は、人間と違い、霊力が高く、人間には無い特殊な能力を皆様、お持ちだということです。
霊力が高いほど、強い神気を放ちます。
普通の人間には、神気や霊力は感知できませんが、神気を放つ神獣人は、人にはない、独特な佇まいをしておりますので、神々しいとか、妖艶とか、覇者のようなと形容されています。
このことは、ご存じですか?
『あーそうだな。よく聞くよな。』
皆、一様に、頷いている。
『ええ。よく聞きますよね。見た目だけで、カリスマ性があるとか。』
『翔も、見ていると吸い込まれるような、引き込まれるような魅力があったわ。』
『惚気はいいわよ。』
『違うわよ。美月。私は、事実を言ってるだけよ。』
『喧嘩しないのよ。美咲は、翔くんにお会いしてから、夢中で…。翔君のために、これから神獣人について学ばないとと言っておりまして…。花姫と花王子が互いに惹かれ合うってホントなんだと、主人と感心して話してたくらいなんですよ。』
『そうなんですね。花姫と花王子が互いに惹かれ合うのも、神気に関係があります。
こちらはまた、別の機会にお話しさせて頂きます。』
『皆さんご存知のようでしたので、お話を続けさせて頂きます。
もう一つは、
神獣人は、激しい感情を表すことも、ございますが、感情に流されず、冷静沈着で、大きな視野で理性的、客観的に物事を見る冷徹な方が多く、時に、冷酷、冷血と揶揄されることもございます。
この理性的、客観的に物事を見る冷徹さは、
特に、仕事面で発揮されますので、神獣人の方は、才気に溢れ、カリスマ性があり、どの分野でも突出した成果を発揮される方が多くいらっしゃいます。
このことは、ご存じですか?』
『あー、聞いたことがあるな。』
皆一様に頷くのを確認した千景さんは、話を続けた。
『ご存知でよかったです。
それでは、続けさせて頂きます。
神獣人の特質の殆どは、高い霊力を持っていることと関係しています。
先程述べました仕事面で発揮される冷静沈着、冷徹など言われる性質は、特に代表的なものになります。
神獣人は、高い霊力があることで、もつ特質ゆえに、長きに渡り、社会において、能力を、発揮し繁栄してきました。
そのため、代々神獣人五族は、
それぞれ霊力の一番高い者をその一族の長とし、高い霊力を絶やさぬよう同じ一族の同程度の霊力同士の婚姻を続けていらっしゃいます。
神獣人の花王子が人間の花姫様と婚姻なさるのも、互いに惹かれあう性質もありますが、
花姫様の場合、他の人間の女性と違って、
霊力の高いお子様をお産みになるからでもあります。
霊力という能力により実力の差異がハッキリしておりますので、
神獣人一族の社会は、人間社会より、上位、下位がハッキリした縦社会になっております。
先程も申しました感情に流されず、冷静沈着で、大きな視野で理性的、客観的に物事を見る性質は、仕事面で発揮されると、
冷徹さが突出して見えるようですが、
神獣人の多くは、他者との感情的な諍いを好みませんので、人間関係面では、思慮深さや聡明さとして現れ、相手の立場に立った人間として対等な関係を築かれる温和で柔和な方が多くいらっしゃいます。
感情的な諍いや、立場を弁えない態度や、常識や礼を失する態度を好まれないので、
新獣人一族は、霊力の高さによる実力主義の縦社会ですから、人間社会より、
常識や立場を踏まえた節度ある態度が求められる傾向は強いと言えます。
ここでやっと、ご質問の
花姫様にご姉妹がいる場合、花姫様かどうかの確認が済むまでは、花王子様と花姫様は会ってはいけないというお話になるのですが、
花姫は国の宝と言われていることは、皆様、ご存知だと思いますが、
霊力の強い子をお生みになり、一族の絆を強め繁栄に導くとされる花姫様は
神獣人一族にとって
特別な存在になっておりますが、
特に、花王子様にとっての花姫様は、他に類を見ないほどの特別な存在になります。
花王子様と花姫様は互いに惹かれ合い結び付きが強いと言われております。
それは間違いではないのですが、
花紋が現れるまで普通の女の子と何も変わらない育ちをする花姫と違って、
胸に花紋を持ち生まれてくる花王子は、
物心つくお年になる頃から、胸にある花紋を通して、番の花紋を持つ花姫を感じてお育ちになるようで、
花王子の方が、花姫より、お相手に向ける愛情がより強くなる傾向があります。
花王子と花姫がお会いになられますと、お会いした瞬間から花姫様を溺愛される花王子様が多くいらっしゃいます。
神獣人一族は、
常識や立場を踏まえた節度ある態度が求められる実力主義の縦社会ですから、
花王子が大切にする花姫様への礼節には、
神獣人一族、皆、一様に配慮されます。
また、神獣人一族は、
花姫様のみならず、親、兄弟姉妹、親族に至るまで大切にする習わしがございます。
そういったことがございますので、
花姫会では、
花姫様は勿論、ご家族、ご親族どの方に対しましても、
常識や立場を弁えた礼節のある態度で接しております。
特に、花姫様のご姉妹の方は
花姫様ではないとわかった折も変わらず、
花姫様同様の礼節を弁えた態度であるよう花姫会会長の柘榴様より厳命があるほどです。
花姫の確認は、絶対的なものでは、ありませんので。
神獣人一族、花王子や花王子家にとって、
それだけ特殊とも言えるほど、
特別な存在の花姫様に関することなので、
花姫に出会った花王子や花王子家は、花姫にご姉妹がいれば、花姫かどうかをとても気にされることは多いです。
そのため、花姫会では、
花姫様にご姉妹がいらっしゃる場合は、
まず、ご姉妹が花姫様かを確認させて頂いております。
先程も、申しましたが、このことについても、それ以外のことについても、
神獣人と花姫会の間で決まりや取り決めは、ございません。
花姫会は、花紋が出た花姫様と花王子を繋ぐ役割をしていますので、
花王子様側、花姫様側、
どちらの側にも寄ることのない中立な立場に立っていますので、
何か心配事や相談が、ございましたらおっしゃって下さい。
この件に関する説明は、これで終わりますが、ご理解頂けたでしょうか?』
『ふぅ〜』
『はあ〜』
皆、知らずのうちに、真剣に耳を傾けていたようで、千景さんが、終わりと言うのを聞いて、力が抜けたのか大きく息を吐く音や溜息が聞こえてきた。
キーンと静まりかえっていた居間に、騒めきが広がった。
そんな家族の様子を微笑ましく思ったのか?
一通りの説明を終えてホッとしたのか?
千景さんは、微笑むと、
『皆様、真剣に耳を傾けて頂いていたようで
お疲れになったかと思いますが、ご質問などございますか?』
と言った。
一気に沢山の説明を聞いて、私の頭は、消化しきれず、質問など何にも浮かばなかったけど、家族も皆そうなのか?
それぞれ、色々な表情を浮かべていたけど、
誰も質問をする人はいなかった。
『それでは、次のお話ですが、
花王子様のご家族の方から、
これからについて伝えて欲しいことを、
言付かっておりますので、
できましたら、ご両親と美咲様揃ってお話させて頂きたいのですが…。』
お母さんとお父さんは、この言葉に顔を見合わせた。
見栄と欲の嫌らしさを感じる2人の嬉しそうな顔に、これからのことを思って一気にどんよりした気分になった。
美月は、嫌そうな顔をしている。
そんな中、美咲だけが、得意そうな笑顔を浮かべ、キラキラして見えた。
『あ、はい。良いわよね。貴方。』
『ああ。でも、美月たちは、どうするんだ。もう、話はないのか?』
『忍葉様と美月様は、花姫かどうか確認していませんので、結果次第で変わりますが、
ご姉妹の美咲様が花姫様なので、
今後、色々な変化がございます。
龍咲と櫻葉の方から、簡単な説明をさせて頂きたいのですが構いませか?』
『そうよね。説明しておいて貰った方がいいわよね。貴方。』
『そうだよな。宜しく頼みます。』
『できましたら場所を、変えたいのですが…。』
『美月と忍葉は、居間の方に行けばいいんじゃないか?』
『そうね。案内します。』
『いえ。忍葉様と美月様に案内して頂きますので、千景とお話を続けて下さい。』
そう言うと、右側の龍咲さん?が立ち上がった。続いて、櫻葉さんも、立ち上がった。
『案内お願いします。』
と言ったので、美月と顔を見合わせた。
『美月。案内してあげてくれる。』
とお母さんが言った。
私に何かを言う時と声音が全く違う。
いつもそうだけど、ズキンと胸に刺さる。
『こちらです。』
と美月が案内を始めた。
機嫌が良くなった美咲のはしゃぐ声が、部屋まで聞こえてきた。
お母さんが、部屋に入ってきた。
『忍葉、体調、もういいわよね。』
『はい。』
『5時頃、花姫会の方がいらっしゃるから、10分前には下に来て頂戴よ。』
それだけ言うとお母さんは、出て行った。
時間になってリビングに行ったけど、夕飯の支度や、洗濯物を畳んだり、掃除をしないで、リビングに居るのは、自分の居場所が見出せず、居心地が悪かったので、割とすぐ、玄関のチャイムが鳴ってホッとした。
花姫会の方は予定より早く来るようだ。
お母さんが、玄関に迎えに出てすぐ、客間に案内した。
リビングに戻って来ると
『忍葉、お茶を淹れて。皆んなは、一緒に客間に行きましょう。』
と言って客間にみんなと向かった。。
これを出したら、私は、部屋に戻るんだろうなと思っていたら、
お茶を出している時に、
『家族全員に話があるそうだから、出し終わったら忍葉も、座りなさい。』
とお母さんに言われて、座布団に座った。
私が、座るのを見届けると
『ご家族の方が揃ったようなので、ご挨拶させて頂きます。
私が、虎伏千景、右にいるのが、
龍咲 楓、左が、櫻葉 雪菜です。』
とおっしゃった。
3人とも、其々、年齢も、系統も違うけど、綺麗な人ばかりで面食らってしまった。
『娘たちの母の浅井 晶子と父の清孝、
娘の美咲、美月と忍葉です。
これから色々、宜しくお願いします。』
『私の苗字、虎伏は、皆様、覚えにくいようなので、千景と名前の方をお呼び下さい。
こちらの方が、朝、お会いできなかった長女の忍葉様ですね。』
『はい。今日は、娘が迷惑掛けまして…。』
『体調は、誰でも崩しますし、迷惑ではありませんよ。お気になさらず。』
『もう体調は、宜しいのでしょうか?』
『ええ。もうすっかりいいみたいで。』
『そうなんですか?忍葉様。』
『あっ、はい。お昼を食べて眠ってからは、もう、いいです。』
『そう聞いて安心いたしました。元気になられた様で良かったです。』
とまるで本当に安心したようにホッとした表情をした。
『お母様が忍葉様のことを大変心配されていると伝えましたら、
花姫会会長の柘榴様が、
直々に、忍葉様にと、
洋服をご用意されましたので、花姫会館にいらっしゃる時にお召し下さい。』
『まあ、忍葉なんかに…、勿体ないことをして頂いてありがとうございます。
忍葉も、お礼を言ってね。』
『あっ、ありがとうございます。』
『それでですね。話すことが幾つかありますので、本題に入らせて頂いて宜しいでしょうか?』
『皆んないいわよね?』
と言って家族の顔を見る。
お母さんは、今日、玄関で、何を言ったんだろうか?とか、
洋服を貰ったことでまた嫌味を言われるんだろうな、気が思いな…と考えていたので、
頷くのが家族より一足遅れ、お母さんに睨まれた。
皆が頷くのを確認すると、
『お願いします。』
とお母さんは答えた。
『それでは、最初に、花姫会館に来て頂ける日取りの確認ですが、明後日の火曜、朝10時にお迎えにあがる予定ですが、宜しいでしょうか?』
『ええ。娘たちは、明日、終業式で、明後日から夏休みですからね。早い方がいいということだったので。いいわよね。みんな。』
みんな驚く様子もなく、頷いている。
みんなの様子から、知らされていたことがわかった。お母さんが電話で予定を決めたんだろう。いつも、私だけ、蚊帳の外……。
『いい。いい。明日でもいいくらいよ。』
『学校があるから仕方ないでしょ。』
『終業式くらいいいのに…。もう、お姉ちゃんが吐いたりなんかするから…。』
『美咲は、早く花王子に会いたがりまして…。』
『花姫様は、皆、そうなりますね。
それでは、明後日の火曜、朝10時にお迎えにあがります。』
『宜しくお願いします。』
『では、電話で質問されました。
花姫様にご姉妹がいる場合、花姫様かどうかの確認が済むまでは、花王子様と花姫様は会ってはいけないという神獣人と花姫会の決まりについてですが、そういった明確な決まりはございませんが』
『えっ。電話で話したとき、決まっているから会えないって翔が言ってたよ。』
『翔…、美咲様の花王子の千虎 翔様ですね。』
『はい。そうです。』
『明確な決まりはございませんが、翔様が、そうおっしゃるのは、理解できます。
これからお話しする内容は、
花姫様を通して、これから神獣人一族と関係を築かれるご家族様には最初に、理解して頂いた方が、良いことなので、
花姫様とそのご家族様に必ず最初にお会いした日にお話しさせて頂いております。
電話でお応えしなかったのも、皆様に直接お話しするためです。
ご存知かと思いますが、
神獣人には、人間にはない特質が、いくつかございます。
まず、一番重要になる神獣人の2つの特質とその関係性について、話させて頂きます。
一つ目は、
神獣人は、人間と違い、霊力が高く、人間には無い特殊な能力を皆様、お持ちだということです。
霊力が高いほど、強い神気を放ちます。
普通の人間には、神気や霊力は感知できませんが、神気を放つ神獣人は、人にはない、独特な佇まいをしておりますので、神々しいとか、妖艶とか、覇者のようなと形容されています。
このことは、ご存じですか?
『あーそうだな。よく聞くよな。』
皆、一様に、頷いている。
『ええ。よく聞きますよね。見た目だけで、カリスマ性があるとか。』
『翔も、見ていると吸い込まれるような、引き込まれるような魅力があったわ。』
『惚気はいいわよ。』
『違うわよ。美月。私は、事実を言ってるだけよ。』
『喧嘩しないのよ。美咲は、翔くんにお会いしてから、夢中で…。翔君のために、これから神獣人について学ばないとと言っておりまして…。花姫と花王子が互いに惹かれ合うってホントなんだと、主人と感心して話してたくらいなんですよ。』
『そうなんですね。花姫と花王子が互いに惹かれ合うのも、神気に関係があります。
こちらはまた、別の機会にお話しさせて頂きます。』
『皆さんご存知のようでしたので、お話を続けさせて頂きます。
もう一つは、
神獣人は、激しい感情を表すことも、ございますが、感情に流されず、冷静沈着で、大きな視野で理性的、客観的に物事を見る冷徹な方が多く、時に、冷酷、冷血と揶揄されることもございます。
この理性的、客観的に物事を見る冷徹さは、
特に、仕事面で発揮されますので、神獣人の方は、才気に溢れ、カリスマ性があり、どの分野でも突出した成果を発揮される方が多くいらっしゃいます。
このことは、ご存じですか?』
『あー、聞いたことがあるな。』
皆一様に頷くのを確認した千景さんは、話を続けた。
『ご存知でよかったです。
それでは、続けさせて頂きます。
神獣人の特質の殆どは、高い霊力を持っていることと関係しています。
先程述べました仕事面で発揮される冷静沈着、冷徹など言われる性質は、特に代表的なものになります。
神獣人は、高い霊力があることで、もつ特質ゆえに、長きに渡り、社会において、能力を、発揮し繁栄してきました。
そのため、代々神獣人五族は、
それぞれ霊力の一番高い者をその一族の長とし、高い霊力を絶やさぬよう同じ一族の同程度の霊力同士の婚姻を続けていらっしゃいます。
神獣人の花王子が人間の花姫様と婚姻なさるのも、互いに惹かれあう性質もありますが、
花姫様の場合、他の人間の女性と違って、
霊力の高いお子様をお産みになるからでもあります。
霊力という能力により実力の差異がハッキリしておりますので、
神獣人一族の社会は、人間社会より、上位、下位がハッキリした縦社会になっております。
先程も申しました感情に流されず、冷静沈着で、大きな視野で理性的、客観的に物事を見る性質は、仕事面で発揮されると、
冷徹さが突出して見えるようですが、
神獣人の多くは、他者との感情的な諍いを好みませんので、人間関係面では、思慮深さや聡明さとして現れ、相手の立場に立った人間として対等な関係を築かれる温和で柔和な方が多くいらっしゃいます。
感情的な諍いや、立場を弁えない態度や、常識や礼を失する態度を好まれないので、
新獣人一族は、霊力の高さによる実力主義の縦社会ですから、人間社会より、
常識や立場を踏まえた節度ある態度が求められる傾向は強いと言えます。
ここでやっと、ご質問の
花姫様にご姉妹がいる場合、花姫様かどうかの確認が済むまでは、花王子様と花姫様は会ってはいけないというお話になるのですが、
花姫は国の宝と言われていることは、皆様、ご存知だと思いますが、
霊力の強い子をお生みになり、一族の絆を強め繁栄に導くとされる花姫様は
神獣人一族にとって
特別な存在になっておりますが、
特に、花王子様にとっての花姫様は、他に類を見ないほどの特別な存在になります。
花王子様と花姫様は互いに惹かれ合い結び付きが強いと言われております。
それは間違いではないのですが、
花紋が現れるまで普通の女の子と何も変わらない育ちをする花姫と違って、
胸に花紋を持ち生まれてくる花王子は、
物心つくお年になる頃から、胸にある花紋を通して、番の花紋を持つ花姫を感じてお育ちになるようで、
花王子の方が、花姫より、お相手に向ける愛情がより強くなる傾向があります。
花王子と花姫がお会いになられますと、お会いした瞬間から花姫様を溺愛される花王子様が多くいらっしゃいます。
神獣人一族は、
常識や立場を踏まえた節度ある態度が求められる実力主義の縦社会ですから、
花王子が大切にする花姫様への礼節には、
神獣人一族、皆、一様に配慮されます。
また、神獣人一族は、
花姫様のみならず、親、兄弟姉妹、親族に至るまで大切にする習わしがございます。
そういったことがございますので、
花姫会では、
花姫様は勿論、ご家族、ご親族どの方に対しましても、
常識や立場を弁えた礼節のある態度で接しております。
特に、花姫様のご姉妹の方は
花姫様ではないとわかった折も変わらず、
花姫様同様の礼節を弁えた態度であるよう花姫会会長の柘榴様より厳命があるほどです。
花姫の確認は、絶対的なものでは、ありませんので。
神獣人一族、花王子や花王子家にとって、
それだけ特殊とも言えるほど、
特別な存在の花姫様に関することなので、
花姫に出会った花王子や花王子家は、花姫にご姉妹がいれば、花姫かどうかをとても気にされることは多いです。
そのため、花姫会では、
花姫様にご姉妹がいらっしゃる場合は、
まず、ご姉妹が花姫様かを確認させて頂いております。
先程も、申しましたが、このことについても、それ以外のことについても、
神獣人と花姫会の間で決まりや取り決めは、ございません。
花姫会は、花紋が出た花姫様と花王子を繋ぐ役割をしていますので、
花王子様側、花姫様側、
どちらの側にも寄ることのない中立な立場に立っていますので、
何か心配事や相談が、ございましたらおっしゃって下さい。
この件に関する説明は、これで終わりますが、ご理解頂けたでしょうか?』
『ふぅ〜』
『はあ〜』
皆、知らずのうちに、真剣に耳を傾けていたようで、千景さんが、終わりと言うのを聞いて、力が抜けたのか大きく息を吐く音や溜息が聞こえてきた。
キーンと静まりかえっていた居間に、騒めきが広がった。
そんな家族の様子を微笑ましく思ったのか?
一通りの説明を終えてホッとしたのか?
千景さんは、微笑むと、
『皆様、真剣に耳を傾けて頂いていたようで
お疲れになったかと思いますが、ご質問などございますか?』
と言った。
一気に沢山の説明を聞いて、私の頭は、消化しきれず、質問など何にも浮かばなかったけど、家族も皆そうなのか?
それぞれ、色々な表情を浮かべていたけど、
誰も質問をする人はいなかった。
『それでは、次のお話ですが、
花王子様のご家族の方から、
これからについて伝えて欲しいことを、
言付かっておりますので、
できましたら、ご両親と美咲様揃ってお話させて頂きたいのですが…。』
お母さんとお父さんは、この言葉に顔を見合わせた。
見栄と欲の嫌らしさを感じる2人の嬉しそうな顔に、これからのことを思って一気にどんよりした気分になった。
美月は、嫌そうな顔をしている。
そんな中、美咲だけが、得意そうな笑顔を浮かべ、キラキラして見えた。
『あ、はい。良いわよね。貴方。』
『ああ。でも、美月たちは、どうするんだ。もう、話はないのか?』
『忍葉様と美月様は、花姫かどうか確認していませんので、結果次第で変わりますが、
ご姉妹の美咲様が花姫様なので、
今後、色々な変化がございます。
龍咲と櫻葉の方から、簡単な説明をさせて頂きたいのですが構いませか?』
『そうよね。説明しておいて貰った方がいいわよね。貴方。』
『そうだよな。宜しく頼みます。』
『できましたら場所を、変えたいのですが…。』
『美月と忍葉は、居間の方に行けばいいんじゃないか?』
『そうね。案内します。』
『いえ。忍葉様と美月様に案内して頂きますので、千景とお話を続けて下さい。』
そう言うと、右側の龍咲さん?が立ち上がった。続いて、櫻葉さんも、立ち上がった。
『案内お願いします。』
と言ったので、美月と顔を見合わせた。
『美月。案内してあげてくれる。』
とお母さんが言った。
私に何かを言う時と声音が全く違う。
いつもそうだけど、ズキンと胸に刺さる。
『こちらです。』
と美月が案内を始めた。