♢♢♢♢♢

今日は少し早めに起きて、まつのや旅館の料理長、辰ちゃんから、分けてもらった鰹節と昆布で出汁をとり、昨日の夜、用意して貰って置いた食材を使ってだし巻き玉子と味噌汁を作った。

昨日の夜、使用人の方が運んでくれた夕飯を紫紺様と食べていて、朝、昼、晩と、上げ膳据え膳が続く日々を思ったら、

自分の世界がガラッと変わりすぎて、立ってる場所を見失うようなそんな感覚を感じて、
無性に恐くなった。

1日の何処かで料理を作る習慣を守ることと、お出汁の味が、自分でいられる支えになる気がした。

特に、今日は、本家に挨拶に行く。

だし巻き玉子と味噌汁を食べて望みたい。

そう思って、紫紺様に作ってもいいか?調理の人に聞いて貰えないかお願いした。

紫紺様は、忍葉がしたいようにすればいいし、せっかくだから、全部、忍葉が作った朝食が食べたいと言ってくれたけれど、

それはそれで紫紺様の家に来て初めて迎える朝に、全部自分が作った朝食を食べるのは、何が違う気がしたし、

それに紫紺様は、いいって言ってくれたけど、ホテルのレストランで家庭料理出すみたいな場違い感を感じて、
私が一食全部作っていいの?という気持ちがある。

だし巻き玉子と味噌汁を作るので後は、何か作って下さい。は、返って手間をかけるかもとか、失礼なことかもしれないと思ったけど、使用人の分もつくるから、それは気にしなくていい。

ただその日のメニューによっては対応できないことがあるので、その辺をこれからどうするかは明日相談しましょう。

と料理長の方が言ってくれた。

優しそうな人で安心した。

朝食一つで交渉が必要だから、これから暫くは大変かもしれないけど、味噌汁を作りながら、変わらないものがあるって、安心するんだなとしみじみ思った。

これがあって紫紺様が居てくれたら、凄く頑張れそうな気がしてきた。