休日の朝、いつもお父さん、お母さん、美咲でTVを囲んでしているコーヒータイムは、
昨日に、引き続き花姫の話しばかりのようだった。

今日は、お母さんの機嫌がいいのか?
食事の片付けをしている間に、
美月と私の分の飲み物を用意してくれた。

『アイスティーが美月。アイスカフェ・ラテが、忍葉の分ね。美月に10時10分前に用意を済ませて、リビングに来るように。って言ってね。忍葉もよ。待たせたら悪いからね。

あ、そうそう。
昨日の夜に、美月に長袖のワンピースを貸すよう言っておいたから、ついでに貰ってね。普段着じゃあんまりだから、美月のワンピースを着るのよ。わかったわね。』
と色々、言われてから、
グラスが2つ載ったお盆を渡された。

言われた通りに、美月にアイスティーを渡し、お母さんの伝言を伝えた。

ワンピースは、今から、部屋に持って来てくれるみたいだ。

部屋に戻って、窓を開け、時計を見たら、
9時ちょっと過ぎだった。

お母さんが淹れてくれたアイスカフェ・ラテを飲む。甘くて美味しかった。

『はぁ〜。』
と大きな溜息が出た。

お母さんが、私も一緒に、花姫会館に連れて行くとは、思わなかったな。
調べて花姫じゃないってハッキリさせた方がいいって言ってたから、そうなんだろうけど……。

『はぁ〜。』
凄く憂鬱だなぁ。また、引越し…かぁ。

ドアをノックする音がした。

開けると、
『お姉ちゃん、このワンピースでいい?』
と美月。

『うん。なんでもいい。ありがとう。』

丁度、階段を上がってきた美咲が口を出した。

『えっ。ちょっとー。美月、そのワンピース、お姉ちゃんに貸すの?えー。違うのにしなよ。』

『私が私の服を貸すのに、美咲にとやかく言われたくない。』

『えー。可愛いのに、勿体ないじゃない。お姉ちゃんが着るんだよ。着たら、もう借りれなくなるじゃない。』

『また、バカなこと言って‼︎アザがうつるわけないし、美咲こそ、無断で人の物を着たり、持ち出したりしないで‼︎』

『えー。双子だからいいじゃない。何、言ってるの?』

『良いわけないでしょ。美咲こそ、何言ってるのよ。』

バタバタバタバタ…
急に、吐き気がしてトイレに駆け込んだ。

『いやだ。お母さ〜ん。また、お姉ちゃん、具合悪くなったみたい。』

『なんだ。さっきから騒がしいな。』
『忍葉がどうしたの?』

お父さん、お母さんも、2階の廊下に集まってきた。

『お姉ちゃんが急に、トイレに駆け込んで。』

『またなの。あの子は、本当に、出掛けるって時に、気持ちが悪くなったり、頭が痛くなるわね。』

『オイ。もう直ぐ9時半だぞ。美咲と美月は、用意済んだのか?』

『私は、済んでるよ。』

『私は、後、服を着替えるだけよ。』

『美咲は、早く着替えてらっしゃい。美月は、もう下に降りてなさい。すぐ喧嘩するんだから。美咲も、着替えたら、リビングで待ってて。もう喧嘩しないでね。』

トイレから出ると、お母さんが立っていた。

『吐いたの?真っ青じゃない?』

『急に吐き気がして。でも、吐いたらスッキリしたから。』

『その顔色じゃ、今日は、無理なんじゃないか?晶子。』

『そうね。とりあえず、水。水を持ってくるわ。水分補給しないと。脱水になるといけないから。今は夏だし…。忍葉は、横になってなさい。』

『お父さん、忍葉が横になるの手伝ってあげて。』


ベッドに横になっていると、
『入るわよ。』
と水を手に持ってお母さんが、部屋に入ってきた。

『忍葉は、どうですか?』

『吐き気は治まったらしいが、青い顔でグッタリしてるな。』

『忍葉、水を持って来たから、飲みなさい。
出した分、補給しておかないと。』

『お父さんは、下に、行ってて下さい。
美月と美咲を一緒にして置くと、喧嘩ばかりするから。』

『そうだな。』

そう言うと、父、清隆は部屋を出て行った。

『忍葉。水もういいの?』

『うん。ごめんなさい。出掛ける時に、いつも迷惑を掛けて。』

『ホントよ。毎回、毎回、出掛けるって時に、人騒がせなんだから。

美月や美咲に、小さな頃から、貴方の見た目のせいで、嫌な思いをさせているんだから、2人の役に立つことをしなさい。って昨日、言ったばかりなのに、足を引っ張って‼︎』

『もう、落ち着いたから、皆んなで、行って来て。』

『当たり前でしょ‼︎何を言ってるの?
貴方が出掛けられる時を待っていたら、何処にも行けないじゃない。』

『もう、吐き気は治まったみたいね。まだ、青白いから、寝てなさいよ。』

そう言うと、お母さんは、ドアをバタンと閉めて出て行った。