第1話「追放どころでは済まなかった日」
「レイル。お前はもう用なしだ!」
これからグリフォン退治のクエストが始まるという段階で、唐突に告げられた。
冷酷にそう言い切ったのは、Sランクパーティ『放浪者』のリーダー。
時期勇者と噂される聖騎士のロードと、その仲間たちだった。
「え?」
その冷たい言葉に茫然と返すのはパーティ内で唯一Dランク冒険者のレイル。
彼は普段は雑用係をしているだけで、とくに抜きんでた強さがあるわけではない。
「え? じゃない、今日でその顔とも見納めだ! せいせいするぜ──」
突き放すような言い方に茫然とするレイルであったが、
「ろ、ロードさん? きゅ、急にどうしたんですか? お、俺何か悪いことでも……?」
理由を聞きたいレイルに対して、ロード達はどこまでも冷たかった。
……彼らは皆、Sランクパーティ『放浪者』。
レイル以外はそこそこ古参のメンバーで、一人残らずAランク以上の強さを持ち、総合的な実力をギルドから正式に「S」と認められた正真正銘の猛者たちだ。
そのメンバーは、
城塞のごとき堅牢な防御誇る、元王国騎士副団長の重戦士のラ・タンク。
王国の三賢者のひとり、賢者の塔の管理官を務めていた賢者のボフォート。
王国の第三皇女で、教会から聖女と指名された神殿巫女のセリアム・レリアム。
最後に、
ドワーフ鉱山の主任技師を務めていた、世紀の発明家技術師長官のフラウ。
ここに勇者ロードを含めた5人メンバーが、史上最強のパーティ『放浪者』だ。
そんな彼らが急にどうしたというのだろう。
先日まで優しくて──……Dランクのレイルを受け入れてくれた慈悲深い人たちだと思ったのに。
「えっと……ど、どういうことですか?」
レイルは戸惑い、混乱した。
「何度も言わせるな。お前はもう用なしなんだよ──今日までご苦労さん」
まるで、手切れ金だと言わんばかりに金貨を数枚弾いてよこす。
何枚かはレイルに叩きつけられるようにして衣服の中の転がり込み、うち一枚がその輝きとともに地面に落ちて、澄んだ音を立てた。
だが、レイルはそんなものには目もくれずロードに詰め寄る。
「──え? よ、用なし……って。は? え……?」
い、いきなりなんだよ?
俺が何をした??
レイルは、ただただ戸惑う。
「く、クビってこと、……ですか?」
「クビだぁ? ハハッ、そんな生ぬるいものかよ。早い話が、ここまでくれば、もう用なしってこった。ま、もうちょいでわかるさ」
ば、バカな!
「だ、だって、まだ加入したばかりで──……ロード、さんは俺が必要だって、そう言ってくれたじゃないか?!」
「あぁ、そうだ。必要だったぞ。お前が、な」
「な、ならどうして?!」
食い下がろうとするレイル。
ただでさえ、どこのパーティにも所属させてもらえないレイルにとって、Sランクパーティのメンバーというのは望外の待遇だった。
「もしかして、じょ、ジョーク……ですか?」
そう。きっとジョークだ。
時期勇者と言われ、誰にでも優しく、勇敢な男──ロード。
そんな彼がこんなにあっさりとレイルを見限るはずがない…………。
「ジョ~クだぁああ? あはははは! ジョークなわけあるか! なぁ、みんな──」
ニヤニヤとしたロードが吐き捨てるようにいうと、さも、「さぁ笑ってやれ」とばかりに顎でレイルをしゃくる。
すると、待ってましたとばかりに『放浪者』の面々が声を出しゲラゲラと笑った。
「ばーか! 誰がお前みたいな、雑魚を雇うかよッ。カスのDランクの【盗賊】をよー!」
「くくく。本当に仲間のつもりだったのですか? これだから平民は愚かなのですよ」
「おーほっほっほ! アンタみたいな下賤がしばらくでも私たちと行動を共にできたことにこそ、感謝しなさい」
口々にレイルを罵る『放浪者』の面々。
「まったく、おめでたい奴だなお前は。今まで仲間のつもりでいたのか? この────『疫病神』が!」
ギャッハッハッハッハ!
「疫……病神?」
「そーだよ。疫病神だよテメェは!! そんな奴をなんで仲間にしたかって?…………決まってるだろぉ?!」
ニチャァ……。
この時のロードの醜悪は笑みは二度と忘れることができないだろう。
「──グリフォンの囮にするためさ!」
「「「「ぎゃははははははは!!」」」」
ゲラゲラと笑い転げるロード達。
それを裏付けるかのように、バサァ!……と、上空を覆う黒い影!
ロード達の馬鹿笑いを聞きつけ本当にやってきたのだ。…………超危険種指定のグリフォンが!
「おっと来たな。じゃあ、せいぜい暴れて囮役をまっとうしてくれや────『疫病神』ちゃん! ぎゃははははは」
ば、馬鹿な!!
そんなことが許されるはずが────。
「許されるぜぇ? だって、世の中ってのは不公平にできてるんだもんよ────搾取されるものと搾取するものがいる、当然だろ??」
当然??
当然だって……?!
Sランクだったら何をしても許されるとでも思っているのか!?
えぇ、どうなんだよ────!!
「ろ、ローーーーーーードてめぇぇええええええ!!」
レイルの叫びがむなしく響き渡る。
「ロード、さん! だろッッ!!」
「──がぁッ!」
ゴキィ…………!!
情け容赦ない一撃。
レイルの意識をかすめ取らんばかりのその打撃を食らい、レイルが滑稽なくらいバウンドして地面に横たわる。
(畜生……! 何でこんな目に……!!)
薄れゆく意識の中、レイルはロードの勧誘に乗った自分を呪った──。
そう。
町で嫌われていた万年Dランクの冒険者をSランクが雇うなんて裏があるに決まっている……!
それがこれ────。
ロードがレイルを仲間に誘った目的はただ一つ。
『クルァァァアアアアアアアアアアアア!!』
バサッバサッ!
超危険種モンスター──グリフォンの生き餌……つまり囮として、だったのだ。
「レイル。お前はもう用なしだ!」
これからグリフォン退治のクエストが始まるという段階で、唐突に告げられた。
冷酷にそう言い切ったのは、Sランクパーティ『放浪者』のリーダー。
時期勇者と噂される聖騎士のロードと、その仲間たちだった。
「え?」
その冷たい言葉に茫然と返すのはパーティ内で唯一Dランク冒険者のレイル。
彼は普段は雑用係をしているだけで、とくに抜きんでた強さがあるわけではない。
「え? じゃない、今日でその顔とも見納めだ! せいせいするぜ──」
突き放すような言い方に茫然とするレイルであったが、
「ろ、ロードさん? きゅ、急にどうしたんですか? お、俺何か悪いことでも……?」
理由を聞きたいレイルに対して、ロード達はどこまでも冷たかった。
……彼らは皆、Sランクパーティ『放浪者』。
レイル以外はそこそこ古参のメンバーで、一人残らずAランク以上の強さを持ち、総合的な実力をギルドから正式に「S」と認められた正真正銘の猛者たちだ。
そのメンバーは、
城塞のごとき堅牢な防御誇る、元王国騎士副団長の重戦士のラ・タンク。
王国の三賢者のひとり、賢者の塔の管理官を務めていた賢者のボフォート。
王国の第三皇女で、教会から聖女と指名された神殿巫女のセリアム・レリアム。
最後に、
ドワーフ鉱山の主任技師を務めていた、世紀の発明家技術師長官のフラウ。
ここに勇者ロードを含めた5人メンバーが、史上最強のパーティ『放浪者』だ。
そんな彼らが急にどうしたというのだろう。
先日まで優しくて──……Dランクのレイルを受け入れてくれた慈悲深い人たちだと思ったのに。
「えっと……ど、どういうことですか?」
レイルは戸惑い、混乱した。
「何度も言わせるな。お前はもう用なしなんだよ──今日までご苦労さん」
まるで、手切れ金だと言わんばかりに金貨を数枚弾いてよこす。
何枚かはレイルに叩きつけられるようにして衣服の中の転がり込み、うち一枚がその輝きとともに地面に落ちて、澄んだ音を立てた。
だが、レイルはそんなものには目もくれずロードに詰め寄る。
「──え? よ、用なし……って。は? え……?」
い、いきなりなんだよ?
俺が何をした??
レイルは、ただただ戸惑う。
「く、クビってこと、……ですか?」
「クビだぁ? ハハッ、そんな生ぬるいものかよ。早い話が、ここまでくれば、もう用なしってこった。ま、もうちょいでわかるさ」
ば、バカな!
「だ、だって、まだ加入したばかりで──……ロード、さんは俺が必要だって、そう言ってくれたじゃないか?!」
「あぁ、そうだ。必要だったぞ。お前が、な」
「な、ならどうして?!」
食い下がろうとするレイル。
ただでさえ、どこのパーティにも所属させてもらえないレイルにとって、Sランクパーティのメンバーというのは望外の待遇だった。
「もしかして、じょ、ジョーク……ですか?」
そう。きっとジョークだ。
時期勇者と言われ、誰にでも優しく、勇敢な男──ロード。
そんな彼がこんなにあっさりとレイルを見限るはずがない…………。
「ジョ~クだぁああ? あはははは! ジョークなわけあるか! なぁ、みんな──」
ニヤニヤとしたロードが吐き捨てるようにいうと、さも、「さぁ笑ってやれ」とばかりに顎でレイルをしゃくる。
すると、待ってましたとばかりに『放浪者』の面々が声を出しゲラゲラと笑った。
「ばーか! 誰がお前みたいな、雑魚を雇うかよッ。カスのDランクの【盗賊】をよー!」
「くくく。本当に仲間のつもりだったのですか? これだから平民は愚かなのですよ」
「おーほっほっほ! アンタみたいな下賤がしばらくでも私たちと行動を共にできたことにこそ、感謝しなさい」
口々にレイルを罵る『放浪者』の面々。
「まったく、おめでたい奴だなお前は。今まで仲間のつもりでいたのか? この────『疫病神』が!」
ギャッハッハッハッハ!
「疫……病神?」
「そーだよ。疫病神だよテメェは!! そんな奴をなんで仲間にしたかって?…………決まってるだろぉ?!」
ニチャァ……。
この時のロードの醜悪は笑みは二度と忘れることができないだろう。
「──グリフォンの囮にするためさ!」
「「「「ぎゃははははははは!!」」」」
ゲラゲラと笑い転げるロード達。
それを裏付けるかのように、バサァ!……と、上空を覆う黒い影!
ロード達の馬鹿笑いを聞きつけ本当にやってきたのだ。…………超危険種指定のグリフォンが!
「おっと来たな。じゃあ、せいぜい暴れて囮役をまっとうしてくれや────『疫病神』ちゃん! ぎゃははははは」
ば、馬鹿な!!
そんなことが許されるはずが────。
「許されるぜぇ? だって、世の中ってのは不公平にできてるんだもんよ────搾取されるものと搾取するものがいる、当然だろ??」
当然??
当然だって……?!
Sランクだったら何をしても許されるとでも思っているのか!?
えぇ、どうなんだよ────!!
「ろ、ローーーーーーードてめぇぇええええええ!!」
レイルの叫びがむなしく響き渡る。
「ロード、さん! だろッッ!!」
「──がぁッ!」
ゴキィ…………!!
情け容赦ない一撃。
レイルの意識をかすめ取らんばかりのその打撃を食らい、レイルが滑稽なくらいバウンドして地面に横たわる。
(畜生……! 何でこんな目に……!!)
薄れゆく意識の中、レイルはロードの勧誘に乗った自分を呪った──。
そう。
町で嫌われていた万年Dランクの冒険者をSランクが雇うなんて裏があるに決まっている……!
それがこれ────。
ロードがレイルを仲間に誘った目的はただ一つ。
『クルァァァアアアアアアアアアアアア!!』
バサッバサッ!
超危険種モンスター──グリフォンの生き餌……つまり囮として、だったのだ。