「・・デジャヴ。」

今日は雨予報ではなかった。
そんな予報1mmもなかったから、傘を置いてきたのに。

急に雨にふられた私と橘くんは
いつかの小屋の下で雨宿りをしていた。

･･･あの日から、私達は雨が降っていない日も一緒に帰るようになった。

クラスのみんなからは付き合ってる、だとか色々噂されているようだけど今はあまり気にならない。

作り笑いばっかりするのは、もう、疲れた。

うっかり、いつも一緒にいるクラスメイトの前でそうもらしてしまった。焦って取り繕おうとすれば、

「そっか。私も、茜の作った笑顔はもう見たくないなー。」

そう悪戯っ子のように笑われたから、
この子は案外、鋭いのかもしれない。

「ごめん」と謝った私に、彼女は駅前のクレープで手を打とう、とまた笑った。



「雨、もう止みそうだね。」

橘くんの言葉に前を向けば、
急に降り出した雨はだいぶ小降りになっていた。

「だね。」
「･･･俺、止むまで寝てまってようかな」
「ご勝手に。」

そう言えば彼は「冷たいなー」と口を尖らせる。
そんな彼の表情に思わず吹き出せば、
橘くんはふっ、と笑った。

「やっぱそういう顔の方が似合うよ、水野さんには。」

また少し面食らって、でも笑って彼の方を見れば、橘くんもなんだか少し照れたように笑う。

「・・あ！雨、やんだよ。行こう。」

そう言って歩き出した橘くんの後を追って駆け出す。









雨は嫌いだ。

･･･でも、もう息苦しくは、ない。