雨は嫌いだ。
ジメジメするし、髪の毛はまとまらないし、傘を持つのだって面倒だ。
・・・なにより、雨が降ると息苦しさが、増す。
突然の雨に降られた私、水野茜は憂鬱な気分に陥りながら、近くにあった小屋の下で雨宿りをしていた。
急いで駆け込んだものの雨の勢いは強く、すでに髪は濡れ、靴下はしめっていて気持ち悪い。
「最悪・・。」
はあ、と今日何度目か分からないため息が漏れた。
梅雨は1週間ほど前に明けたはずで、今朝の天気予報では雨予報なんて欠片も無かったのに。
「・・何回ため息つくの?」
「びっ・・くりしたあ・・。」
私以外誰もいないと思い込んでいた私の耳に飛び込んできた声。
驚いて横を向けば、そこにはしゃがんでこちらを見る制服姿の男が。
「・・そんなにため息ついてた?」
「うん、大分。」
そうだけ言って手元のスマホに目を落とし、ふわあっと欠伸をした彼は私と同じクラスの橘くん。
茶色に染められた髪に耳に光るピアス。クラスは同じだがあまり接点はなくて、話した事も数回。
髪が少し濡れていて、暇そうにスマホをいじっている所を見れば、彼も突然雨に降られ、そして傘を持っていないのだろう。
特に話すこともなくて無言のまま時間が過ぎる。ちらっと横目で橘くんを見れば、なんとしゃがんだままウトウトしていた。・・なんと器用な。
そういえばグループは男子の明るい部類に所属しているものの、あんま大声で話している所は見たことないし、よく机に突っ伏して寝てるイメージがある。
けどまさか雨が目の前でザーザー降っている中、座ったまま寝るとは。
予想もしていなかった光景に思わず笑ってしまう。
元々整った顔立ちをしている彼の、コクンコクンと頭を揺らして居眠りする姿はいつもより幼く見える。
そんな彼を観察していれば、パチリ、と目が開く。
「・・俺寝てた?」
「うん。とても器用に。」
私のその言葉に「まじかー。」と笑ってまだ眠そうに欠伸をした彼。
そして、私の方を向き直って、言う。
「俺、雨好きなんだ。」
胸がどくっ、と鳴った。
「なんか、落ち着くっていうか。雨が地面に当たる音とか、匂いとか。なんかすっごいー・・」
「私は嫌い」
自分が思っていたよりも、冷たい声が出た。
「・・・水野?」
不思議そうに私の方を見つめる橘くん。
雨は嫌いだ。
だいっきらい。
世界で一番、なによりも、きらい。
⋯酷い顔を、していたのだろう。
「・・ごめん、なんか俺気に障ること言った?」
はっ、とその橘くんの言葉で我に返った。
「いやっ、ちがうごめん!なんかちょっとボーッとしてた!」
心配そうな橘くんに向き直って慌てて笑顔を作る。
「あっ、雨やんだから、帰るね!」
丁度いいタイミングで止んでくれた雨に感謝して、逃げるように家へと足を運んだ。
ジメジメするし、髪の毛はまとまらないし、傘を持つのだって面倒だ。
・・・なにより、雨が降ると息苦しさが、増す。
突然の雨に降られた私、水野茜は憂鬱な気分に陥りながら、近くにあった小屋の下で雨宿りをしていた。
急いで駆け込んだものの雨の勢いは強く、すでに髪は濡れ、靴下はしめっていて気持ち悪い。
「最悪・・。」
はあ、と今日何度目か分からないため息が漏れた。
梅雨は1週間ほど前に明けたはずで、今朝の天気予報では雨予報なんて欠片も無かったのに。
「・・何回ため息つくの?」
「びっ・・くりしたあ・・。」
私以外誰もいないと思い込んでいた私の耳に飛び込んできた声。
驚いて横を向けば、そこにはしゃがんでこちらを見る制服姿の男が。
「・・そんなにため息ついてた?」
「うん、大分。」
そうだけ言って手元のスマホに目を落とし、ふわあっと欠伸をした彼は私と同じクラスの橘くん。
茶色に染められた髪に耳に光るピアス。クラスは同じだがあまり接点はなくて、話した事も数回。
髪が少し濡れていて、暇そうにスマホをいじっている所を見れば、彼も突然雨に降られ、そして傘を持っていないのだろう。
特に話すこともなくて無言のまま時間が過ぎる。ちらっと横目で橘くんを見れば、なんとしゃがんだままウトウトしていた。・・なんと器用な。
そういえばグループは男子の明るい部類に所属しているものの、あんま大声で話している所は見たことないし、よく机に突っ伏して寝てるイメージがある。
けどまさか雨が目の前でザーザー降っている中、座ったまま寝るとは。
予想もしていなかった光景に思わず笑ってしまう。
元々整った顔立ちをしている彼の、コクンコクンと頭を揺らして居眠りする姿はいつもより幼く見える。
そんな彼を観察していれば、パチリ、と目が開く。
「・・俺寝てた?」
「うん。とても器用に。」
私のその言葉に「まじかー。」と笑ってまだ眠そうに欠伸をした彼。
そして、私の方を向き直って、言う。
「俺、雨好きなんだ。」
胸がどくっ、と鳴った。
「なんか、落ち着くっていうか。雨が地面に当たる音とか、匂いとか。なんかすっごいー・・」
「私は嫌い」
自分が思っていたよりも、冷たい声が出た。
「・・・水野?」
不思議そうに私の方を見つめる橘くん。
雨は嫌いだ。
だいっきらい。
世界で一番、なによりも、きらい。
⋯酷い顔を、していたのだろう。
「・・ごめん、なんか俺気に障ること言った?」
はっ、とその橘くんの言葉で我に返った。
「いやっ、ちがうごめん!なんかちょっとボーッとしてた!」
心配そうな橘くんに向き直って慌てて笑顔を作る。
「あっ、雨やんだから、帰るね!」
丁度いいタイミングで止んでくれた雨に感謝して、逃げるように家へと足を運んだ。