「私の妻を捨てた挙句、侮辱するとは」
「はっ! だからお前になにが……」

 すると、部屋にいた騎士兵が全員その場に跪き、二コラのほうに身体を向ける。
 その異様な光景に何が起こるのかと、伯爵は恐怖心を覚えた。

「知らなければよいものを、私は第一王子二コラ・ヴィオネだ」

 二コラは堂々とその場で正体を明かすと、伯爵は目を丸くして思わずその場にへたり込む。

「第一、王子だと?!」
「ええ、辺境の地へはあなたの不正を暴くため、そして私の趣味で行っておりました。王都からは離れて身分を隠していたのでわからなかったでしょうね」
「まさか、じゃあ王も……」
「ええ、全てこのことをご存じですよ、ブレスの協力のおかげで早くことが進みました」

(第一王子、様? 二コラが?)

 リーズは今まで過ごしていた優しい二コラと別人のような気がして、呆然としてしまう。