二コラはブレスに続いて言葉を紡ぐ。

「また、ここにいるリーズ嬢をあなたは辺境の地、それも獣が出る危険な森に捨てましたね?」
「ぐぬぬ」
「この国で自分の子を捨てることがどのような罪に問われるかご存じですね?」

 責め立てる二コラに対して、余裕の表情を見せる伯爵。

「はっ! 何を若造が知ったふうな口を利くな! お前みたいな騎士が裁けるはずがないだろう」
「そうですか、あくまで改心しないのですね」
「改心? ふざけるな、なんでこんな自分の娘でないやつを育てねばならん」

「え……?」

 リーズはその言葉を聞いて身体が固まる。

(娘じゃない?)

「お前は知らんだろうが、死んだお前の母さんの連れ子なんだよ、お前は」
「え?」
「父上! リーズには言わない約束です!」
「知らんっ! お前はほんと邪魔だったんだ。聖女だからとお前の母さんを娶ったのに、すぐに力尽きて聖女としての回復力を失った」

(聖女? 回復力……まさか私の傷が治るのって……)

「話はそれだけですか?」
「あ?」
「話はそれだけかと言っている!」

 二コラは怒髪天を衝く勢いで怒り、伯爵をすごむ。
 その目に圧倒されて伯爵は思わず後ずさった。