村の子供たちと遊んでいたリーズは、珍しく昼間に帰ってきた二コラに呼び止められる。

「リーズ」
「二コラ、どうしたの?」

 馬から降りた二コラはリーズを抱きかかえて再び騎乗する。

「え?」
「飛ばすから掴まってて」
「ど、どこ行くの?」
「ないしょ♪」

 リーズと二コラを乗せた馬はまっすぐに突き進み、やがてリーズの実家だったフルーリー家についた。

「ここ……」
「ああ、君の昔の家だよ」

 そう言うと、馬を降りた二コラは玄関のドアを叩く。
 中からは待っていたかのようにブレスが出てきた。

「え、お兄様?!」
「リーズ! ようやく会えたね」

 そう言って抱き着こうとするブレスから避けるように、二コラはリーズの肩を抱き寄せる。

「ブレス、言ったはずだ、リーズは僕の『妻』なんだ。気安く触らないでほしいね」
「勝手に奪っておいて何を言うんだ!」

(え? どういう状況なの? 知り合いなの?)

 こほん、と二コラは咳払いすると、ブレスに停戦を申し込み、そして何やら合図をする。
 すると、ブレスは玄関の門を全開にした。

「我が父、フルーリー伯爵は廊下の突き当りの部屋にいる! 頼む!」

 その声かけと同時に、伯爵邸のまわりから現れた騎士兵たちが玄関から中になだれ込んでいく。