あれからリーズは少しずつ二コラの妻として、辺境の地の生活に慣れていった。

「リーズ!」
「おかえりなさい、二コラ」
「村のみんなから今日はリーズが畑仕事中に怪我をしたと聞いてすぐに帰ってきたんだ。怪我の具合は?!」
「大げさですよ、ただ芋ほりで引っこ抜くときに転んで足を怪我しただけです」
「そうか、よかった。でも化膿したらよくない、見せてごらん」
「に、二コラ……」

 そう言ってリーズのスカートをめくると膝の傷の部分を見る。

「ああ、かなり深いよ、薬草を塗っておこう」

 棚の瓶から薬草漬けを取り出すと、それをリーズの足に貼り付ける。

「いたっ!」
「がまんして」
「うん……」

 布をあてて巻いて手早く治療する様にリーズは顔を赤くして彼を見つめる。
 その視線に気づいた二コラはにやりと笑うと、リーズの頬に手を当てて言う。

「なに? 惚れちゃったかな?」
「なっ! 違います!」
「いや、別に夫婦なんだから好きになってくれていいのに」

 二コラのぼやきが部屋に響くと、リーズは恥ずかしさでベッドに入ってシーツにくるまってしまった。

(言えないわ、本気で好きになっちゃったなんて)