翌日、凛には会わなかった。翔太はいちおう丘の下もチェックしたが、ボタンもビー玉も置かれていなかったし、彼女が教室に来ることもなかった。
 だが昼休み、一緒に教室で弁当を食べる五十川が言った。「どうしたんだよ、二人とも」
「どうもしてないよ」
「嘘つけ。じゃあなんで、一緒に弁当食べるのやめたんだよ」
「いいだろ、別に」
「あんなに仲良しカップルだったのに」弁当箱のおにぎりを箸でつつく彼は、むしろ不思議そうだ。「喧嘩でもしたのか」
 ただの喧嘩ならどれだけいいだろう。それならさっさと謝れば済む話なのに。
「喧嘩なんてしてない」少し焦げた卵焼きを食みながら、翔太は苦々しく言った。「そんなの、まともにしたことないよ」
「だよなあ」
 俺から連絡する。そうは言ったものの、翔太にその当てはなかった。凛は律儀に待ってくれているが、一体どうすればいいのか彼にも分からなかった。
 そんな中、帰宅後に再び部屋の電話が鳴った。
 美沙子はちっとも帰ってこないから、彼女関連だったら困るな。そう思いながら電話に出た翔太は、嫌な予感を覚えた。電話の相手はアルバイト先の楠で、彼は明日にでも来て欲しいと言った。