なんという運命なのだろうか。
お兄ちゃんと南輝くんが取り違えられてしまった。
だから私は南輝くんが本当のお兄ちゃんだということを知らずに好きになり恋人同士になった。
取り違えられていなかったら、私は南輝くんのことを異性として好きにはならずに、きっと良好な兄妹関係になっていただろう。
取り違えられたという真実を知ってしまって、もう南輝くんと恋人同士でいることはできないという現実。
そのことに苦しむこともなかった。
憎い。
こんな運命。
誤って取り違えられてしまった。
その運命が憎くて憎くてたまらない。
……だけど……。
そもそも私と南輝くんが恋人同士にならなければ。
真実を知っても驚きはしてもショックは起こさなかっただろう。
私と南輝くんは、お互いの家族を驚かせたくて付き合っているということを伝えた。
はずなのに。
とんでもなかった。
驚かされたのは私と南輝くんの方だった。
それだけではない。
かなりショックを起こしている。
そのはず、なのだけど。
あまりにもショックだからだろうか。
今の私の頭の中と心の中は考えることと感情が無に近い状態になっている。
だけど。
そんな中でも。
この言葉は頭の中でしっかりと文字として浮かび上がっている。
それは———。