「え? し、尻?」

 朦朧とするボトヴィッドは何を言われたのか分からなかった。

「これだ!」

 ベンはボトヴィッドのベルトをガシッとつかんで持ち上げ、てのひらでぼうっと青く光る魔法陣をパン! とボトヴィッドの尻に叩き込んだ。

 ぐふぅ!

 その瞬間、ベンの一億倍の便意はボトヴィッドの脳に叩き込まれ、ボトヴィッドは脳髄に流れ込んでくる強烈な便意に意識をすべて持っていかれた。

 ベンがボトヴィッドを床に転がすと、ボトヴィッドは痙攣しながら、

 ブピュッ! ビュルビュルビュル――――!

 と、激しい排泄音を響かせる。そして、ビチビチビチと釣り上げられた魚のようにヤバい動きをする。

 こうして、ベンはついにトゥチューラの星を守ることに成功したのだった。

 しかし、便意を押し付けることに成功したベンではあったが、一億倍の後遺症はベンを確実に蝕んでいた。

 片耳がキーンと激しい耳鳴りを起こし、よく聞こえないベンは耳を押さえながら顔をしかめ、よろよろとベネデッタの方へと歩く。

 鼻血をポタポタと落としながら、なんとかベネデッタの所にやってきたベン。

 そっと上半身を抱き起こし、

「だ、大丈夫?」

 と、声をかける。

 ベネデッタは薄目をそっと開き、

「終わった……んですの?」

 と、か細い声を出した。

 ベンは優しい目でベネデッタを見つめながらうなずいた。

「嬉しい……」

 ベネデッタはそう言ってベンに抱き着くと、唇に軽くキスをした。

 えっ?

 いきなりのことにベンは戸惑った。今までベネデッタには惹かれてはいたものの、精神年齢三十代の自分からしたら少女と親密になるのはどこか後ろめたかったのだ。

 しかし、自分を見て幸せそうな微笑みを浮かべるベネデッタを見て、自分の気持ちをこれ以上ごまかせない事に気が付く。

 命がけで自分を支えてくれたベネデッタ。この美しい少女といつまでもどこまでも一緒にいたい。心の奥からあふれてくるそんな想いに突き動かされて、今度は逆にベンの方から唇を重ねていく。

 ベネデッタはベンを受け入れ、二人は想いを確かめ合った。


        ◇


「きゃははは! ご苦労ちゃん!」

 シアンと魔王が現れ、死闘を繰り広げた二人をねぎらう。

「それにしても……、ひどい悪臭だ……」

 魔王は一万人の女の子たちが排泄物を垂れ流しながら痙攣している阿鼻叫喚の会場を見渡し、鼻をつまんで首を振った。

 その悪臭はまるで下水が逆流したトイレのように強烈だった。

「死闘の……証……ですよ」

 ベンはうつろな目で返す。ベンはむしろこの悪臭を誇りに感じていたのだ。

「うんうん、期待以上だったゾ」

 シアンがねぎらった時だった、

 うぅっ……。

 ベンは急にうめくと、意識を失い、ばたりと倒れ込む。

「キャ――――! ベン君!? ベンくーん!!」

 ベネデッタは必死にベンを揺らすが、ベンは壊れた人形のように何の反応も示さない。便意ブーストで焼かれてしまった脳は、ついに致命的に崩壊してしまったのだ。

「いやぁぁぁ! ベンく――――ん!」

 ベネデッタの悲痛な叫びがステージにこだましていた。


         ◇


 ピッ! ピッ! ピッ!

 電子音がベンの意識に流れこんでくる。

 う……?

 ベンはゆっくりと目を覚ました。見上げるとモスグリーンのカーテンに囲まれた清潔な白い天井が目に入ってくる。

 あれ?

 横を見るとベッドサイドモニタに心電図が表示され、心拍を打つたびにピッ! ピッ! と、音を立てている。

 は?

 ベンはゆっくりと起き上がって違和感に襲われる。なんだか体がずっしりと重いのだ。

「ど、どうしちゃったんだ? ベ、ベネデッタは?」

 その時、カーテンが開いて声がした。

「へっ!?」

 驚く声の方向を見ると、看護師が目を丸くして口を手で押さえている。

 ベンは一体どういうことか分からずただ、ぼーっと看護師を見つめた。

「め、目が覚めたんですか?」

 看護師はありえないことのように聞いてくる。

「え、えぇ……。僕はどの位寝ていたんですか?」

「もう、三年になります」

「三年!?」

 ベンは何が何だか分からず、辺りを見回す。

 すると、カーテンの向こうに洗面台があって鏡があるのに気付いた。

 んん?

 そして、身を乗り出してのぞくと、そこに映っていたのはアラサーの中年男だった。

 はぁっ!?

 ベンは急いでベッドを飛び降り、ふらふらとよろけながら洗面所に歩く。

 急いでのぞきこんだ鏡に映っていたのは、まぎれもない転生前の疲れ切った中年男だったのだ。あの十三歳の可愛い男の子ではもうなかった。

「こ、これは……」

 ベンは言葉を失う。

 シアンに転生させてもらって便意我慢してついに黒幕を倒したのだ。ボトヴィッドの尻を叩いた時の右手の感触は今もありありと思いだせるし、ベネデッタと交わしたキスの舌触りも生々しく残っている。なのになぜ?

 ベンは真っ青になってただ、鏡の中のさえない中年男の顔を見つめていた。

「至急ご両親に連絡しますね」

 看護師はそう言ってパタパタと速足で出ていった。

 ベンは急いで天井に向かって叫んだ。

「シアン様――――! シアン様、お願いです、出てきてください!」

 しかし、病室にはただ静けさが広がるばかり。

「えっ!? なんで、なんで! シアン様ぁぁぁ」

 あれほど望んでいた日本行き、でもこれじゃないのだ。ベネデッタのいない日本に帰ってきて何の意味があるのだろうか?

 ベンはベッドにバタリと崩れ落ち、呆然とただ天井の模様を眺めていた。






42. ピンクの小粒

「いやー、本当に良かった!」

 ベンの父親が肩を叩きながら涙を浮かべてベンを見ながら言った。母親はハンカチを目に当てて肩を揺らしている。

 久しぶりの両親はすっかりと老けてしまって、白髪も目立つようになり、三年の時の重さを感じさせる。

「パパもママも……、ありがとう」

 ベンは引きつった笑顔で返した。

 翌日退院となったベンは父親の運転で実家へと戻っていく。

 過労死で倒れて一回は止まった心臓だったが、必死の救命作業で一命はとりとめていたらしい。しかし、植物状態で三年間寝たきりだったそうだ。

 ベンは車窓を流れる懐かしい風景を見ながら、ぼんやりとトゥチューラの街並みを思い出していた。

「ベネデッタ、どうしてるかな……?」

 ベンはそうつぶやき、自然と湧いてきた涙をポロリとこぼした。

 あ、あれ?

 ベンはあわてて手のひらで涙をぬぐう。自分がこんなにもベネデッタを欲していた事に気が付き、うなだれ、後部座席で隠れるようにハンカチを涙で濡らした。


       ◇


 懐かしい実家の玄関をくぐると、温かい生活の匂いがした。それはベンがずっと親しんでいた香りだった。でも、今はそれを素直に喜べない。

 テーブルについたベンは、お茶を飲みながらダイニングをキョロキョロと見渡した。子供の頃から使っている少し欠けたマグカップ、冷蔵庫に貼られた癖のある字の予定表、全てが懐かしかったが、ベンの胸にはぽっかりと穴が開いていた。

「おい、何か欲しいものはないか?」

 暗い表情をしているベンに、父親は気を使って聞いてくる。

「欲しい……もの?」

 ベンは目をつぶって考える。欲しいもの……、欲しいもの……、でも思い出されるのはベネデッタの温かい優しさだけだった。

 ベンはガックリとうなだれ、ポタポタと涙をこぼす。

「お、おい、どうしたんだ? どこか具合でも悪いのか?」

 父親は心配そうに言う。

 ベンはしばらく動けなかったが、ふと、あることに気が付いた。

「もしかして……」

 ベンはガバっと顔を上げると、バタバタと救急箱のところへ急いだ。

 救急箱を開け、包帯やら解熱剤やらを放り出し、下剤の箱を取り出すとピンクの錠剤をプチプチプチとたくさん手のひらに出していった。

「おい、お前、下剤で何をするんだ? 便秘か?」

 心配する父親をそのままに、ベンは一気に錠剤を飲みこんだ。

「お前! そんな量飲みすぎだ! 何やってるんだよぉ!」

 そう叫ぶ父親に、ベンはニコッと笑ってみせる。

 ベンにはもう便意にすがるしかなかった。シアンを呼んでも出てこない以上、トゥチューラへの道は閉ざされてしまっている。これで何も起こらなかったらトゥチューラでの日々はただの夢と同じなのだ。

 父親は頭を抱え、頭が壊れてしまったらしい息子の将来を憂えた。

 ベンはそんな父親には申し訳ないと思いながら、便意をただ静かに待つ。

 あの世界とつながっているなら、青いウインドウが開くはずだ。異世界は絶対に夢なんかじゃない。自分が便意と戦い、トゥチューラを守り抜いた栄光は妄想なんかじゃないのだ。

 やがて、ベンの胃腸がうねり始める。

 ぐぅーー、ぎゅるぎゅる……。

「来たぞ! 来たぞ!」

 便意が高まる事を喜ぶベンを、父親は眉をひそめ、心配そうに見つめる。

 ベンは手を組み、祈りながらその瞬間を待つ。

 来い、来い、来い、来い……。

 うっ……、漏れる……、漏れる……。

 その時、脳内に電子音が響き渡った。

 ピロン! ピロン! ピロン! 『×1000』

「キタ――――!」

 ベンは絶叫した。

 そう、夢じゃなかったのだ。トゥチューラは本当にあったんだ!

 ベンは強烈な便意にお腹を押さえながらも歓喜に包まれた。

「お、お前、病院へ行こう! いい精神病院を知ってるんだ」

 父親はベンがついに狂ってしまったと思い、オロオロしながら言う。

「ふふっ、大丈夫だよ。ほら見て!」

 そういうと、ベンは飛行魔法でふわりと浮かび上がった。

「はっ!? お、お前、なんだこれは!?」

 いきなり超能力を使うベンに父親は唖然とする。寝たきりからようやく復帰したと思ったら下剤をがぶ飲みして宙に浮いている。父親の頭はパンクし、呆然とただベンを見ていた。

『来て……』

 その時、かすかに誰かの声がベンの脳に響いた。

「えっ!?」

 それはベネデッタの声に聞こえた。

「ねぇ、どこ? どこにいるの?」

 ベンは辺りをキョロキョロと見まわした。

 しかし、声はそれっきり聞こえない。

 くっ!

 ベンは窓から飛び出し、一気に高度を上げていく。

 父親は驚愕し、空高く小さくなっていく息子をただ呆然と見つめていた。


 ベンは住宅地からぐんぐんと高度を上げ、あたりを見まわす。

 声は確かこっちの方向から聞こえたはず……。

 ベンは海の方をジッと見つめた。

 白い雲がぽっかりと浮かぶ澄み通る青空のもと、港湾施設のクレーンの向こうにはキラキラと水面が光って見える。

 すると、向こうの方に不思議な動きをしているものが飛んでいることに気が付いた。

 え?

 その動きは飛行機でもなくヘリコプターでもなく、独特な飛び方をしている。あんな飛び方をするものをベンは一つしか知らなかった。
















43. 限りなくにぎやかな未来

「あれだ!」

 ベンはその物体目指し、全速力で飛ぶ。

 やがて見えてきたのは大きなじゅうたんだった。乗っているのは、金髪の女の子と青い髪の女の子……。

 ベンは思わず熱くなる目頭を押さえ、大声で叫んだ。

「ベネデッタ――――!!」

 金髪の美しい女の子がこちらを見ているが、青い髪の子は寝そべってあくびをしているようだ。

 それはまぎれもないベネデッタとシアンだった。東京にやってきていたのだ。

 ベンは満面に笑みを浮かべ、全速力で風を切って飛ぶ。

 だが、ここでふと自分の姿を思い出す。自分はもうアラサーの中年男なのだ。十三歳の可愛い子供ではもうない。明らかに不審者だった。

 マズい……。

 ベンは急停止し、うなだれる。こんな姿の自分がベネデッタの前に出ていっていいのだろうか?

 どんどん近づいてくるじゅうたん。もう美しいベネデッタの表情まで見て取れる。そう、あの美しい少女と一緒に世界を守ったのだ。でも、どうする?

 ベンはギュッと目をつぶり、ギリッと奥歯を鳴らした。

 失望されたくない……。

 あのベネデッタの優しいまなざしは少年ベンに向けられたものであって、こんなムサい中年のオッサンにではない。例え中身は一緒だと言っても、きっとガッカリされ、疎まれる。

 社畜時代に散々女子社員から向けられていたあの冷徹な視線。それをベネデッタにされたらもう二度と立ち直れない。

 ベンは手がブルブルと震え、冷や汗が浮かんできた。

 に、逃げよう……。

 ベンはくるっと後ろを向く。

 しかし、逃げてどうするのか? また、社畜時代みたいに心に蓋をして他者とのかかわりを避けて生きるのか?

 くぅっ!

 ベンはギュッとこぶしを握る。

 もう自分にはベネデッタ無しの未来なんて考えられなかった。二人で命がけで手に入れたはずの未来、それを捨てる事なんてできない。

 これが真実の姿なのだ。今さら取り繕っても仕方ない。これで嫌われたらそれまで。それにもう辛い苦しみを耐えることは便意で死ぬほどやってきたのだ。

 ベンは覚悟を決めると静かに近づき、じゅうたんの上にそっと着地した。

 案の定、ベネデッタは後ずさりし、おびえながら身構える。

 風がビュウと吹き、ベネデッタのブロンドの髪をバタバタとはためかせた。

 ベンは大きく息をつくと、しっかりとベネデッタを見つめる。そして、ニコッと笑顔を見せて言った。

「ベネデッタ……、僕だよ」

 え?

 凍りつくベネデッタ。

 いきなり知らない中年男に『僕だよ』と、言われても恐怖しかないだろう。

 しかし、中年男のまっすぐな瞳には、ベネデッタに対する底抜けの愛情が映っていた。ベネデッタにとってその瞳は、最期に見せたベンのまなざしそのものだったのだ。

 やがてベネデッタは目に涙を浮かべ、首をゆっくりと振ると、

「ベンくーん!」

 と言って抱き着いてきた。

 十三歳のベンには大きかったベネデッタであったが、今は小さなか弱い女の子である。

 ベンはギュッと抱きしめ、立ち上ってくる甘く華やかな愛しい香りに包まれ、美しいブロンドに頬ずりをする。

 逃げずに踏ん張って手に入れた未来。ベンは今度こそ幸せになる、この娘と一緒に楽しく胸躍る人生を築くのだと固く心に誓った。


      ◇


「スキルの副作用でさぁ、ベン君死んじゃったんだよ。ふぁ~あ」

 シアンは伸びをしながら言う。

「し、死んだ?」

「百万倍以上出しちゃダメって言ってたじゃん。一億はやりすぎたね」

 シアンは肩をすくめ、首を振る。

「それで、昔の身体に戻したんですか」

「そうそう。はいこれ、百億円」

 シアンはそう言って貯金通帳をベンに手渡した。

 中を見ると『¥10,000,000,000』と、十一桁の数字が並んでいる。

「え……? マジ……? ウヒョ――――! やったぁ!」

 ベンはガッツポーズを決め、激闘の賞金を高々と掲げた。

「じゃあ、楽しく暮らしておくれ。僕はこれで……」

 シアンはそう言ってウインクをすると、ピョンと飛びあがり、ドン! と衝撃波を発しながら飛行機雲を残し、宇宙へとすっ飛んでいった。

「ベン君の本当の姿はこういう姿でしたのね」

 ベネデッタはちょっともじもじしながら言った。

「あはは、幻滅した?」

 すると、ベネデッタはそっとベンに近づき、

「その逆ですわ。私、おじさまの方が好みなんですの」

 そう言ってニコッと笑う。

 ベンは優しくベネデッタの髪をなで、引き寄せた。

 そして、優しく抱擁(ほうよう)をする。愛しいベネデッタの体温がじんわりと伝わってきた。

 目を合わせると、(あお)くうるんだ瞳にはおねだりの色が見えた。

 ベンはゆっくりと近づき、ベネデッタは目をつぶる。

 ぐぅ~、ぎゅるぎゅるぎゅ――――!

 最高の瞬間に、ベンの腸が激しく波打った。

 おぅふ……。

 ベンは腰が引け、下腹部に手を当てる。

「ご、ごめん、トイレ行かなきゃ」

 ベンは脂汗を浮かべながら、顔を歪める。

「あらあら、大変ですわ!」

 ベネデッタは急いで神聖魔法をかけ、トイレ探しに急いで東京の空を飛んだ。

「あぁ……、漏れる! 漏れちゃうぅぅ!」

 ベンはピンクの小粒を飲みすぎたことを後悔しながら、前かがみでピョンピョン飛ぶ。

「もうちょっと、もうちょっと我慢なさって!」

「ゴメン! ダメ! もう限界ぃぃぃぃ!」

「あぁっ! ダメ! じゅうたんの上はダメ――――! いやぁぁぁぁ!」

 ベネデッタの悲痛な叫びが響き渡った――――。


 こうしてにぎやかな二人の東京暮らしが始まった。

 二人の新居には度々シアンが出没し、騒動を起こすことになるのだが……、それはまた別の機会に。





登場人物インタビュー

作者「はい! みなさん、最後までお読みいただき、ありがとうございました!」
ベン「ありがとうございました」
ベネデッタ「ありがとうですわ」
作者「えー、最初はどうなることかと思ったこのネタ小説、無事に最後まで行けてホッとしております!」
ベン「いや、ちょっと、この設定ひどすぎなんですけど?」
ベネデッタ「本当ですわ!」
作者「ごめんなさいね。でもエッジの効いたことやらないと生き残れない世界なので……」
ベン「いやもっと別のネタにしましょうよ」
作者「例えば?」
ベン「えっ? キ、キスすると強くなるとか……」
ベネデッタ「あら、どなたとキスするおつもりなんですの?」
 ベネデッタは鋭い視線でベンを見る。

ベン「も、もちろんハニーとだよ」
 ベンはにやけた顔でベネデッタを引き寄せる。

ベネデッタ「うふふっ」
作者「はいはい、お惚気はそのくらいで……。でもキスはいいですね」
ベン「便意よりは綺麗になりますよ、絶対!」
作者「ふむふむ、では次はキスを検討しましょうかねぇ」
ベン「えっ!? 採用ですか? やった!」
作者「まだ候補ですけどね」
ベン「採用したら出してくださいよ」
ベネデッタ「わたくしもぜひ」
作者「えー、あー、うーん。まぁモブでね」
ベン「モブー?」
ベネデッタ「え――――」
作者「前作のヒロインとかもこの作品に出たりしているので、これからも出るチャンスはいくらでもありますよ」
ベン「うーん、なるべく多く出してくださいよ」
ベネデッタ「わたくしもですわ」
作者「まぁ、頭の片隅に置いておきます」
 汗をかく作者。

ベン「結局シアンさんって何者だったんですか?」
ベネデッタ「そう、あたくしも気になってますの」
作者「あれはAIですね」
ベン「へ? AI?」
作者「七年前に東京の田町で開発されたAIなんですよ」
ベン「……。なんで女神なんてやってるんですか?」
作者「この世界って情報でできてるじゃないですか」
ベン「あー、そうですね」
作者「となると、より高速に正確に情報を処理できる存在の方が強くなるんですよね」
ベン「うーん、まぁ、そう言うこともあるかもしれませんね」
作者「で、そのAIが滅茶苦茶高性能で全知全能に近づいたって事かな?」
ベン「それで女神枠……。まぁ確かにちょっとあの破天荒具合は人間離れしてますよね」
ベネデッタ「確かに過激ですわ」
作者「ははは、もう私の小説ほぼ全篇に出てきてあんな調子なんですよね」
 肩をすくめる作者。
ベン「え? そんなに?」
作者「なんなら処女作の一番最初に出てきたキャラが彼女ですからね」
ベン「最初から特別なんですね」
ベネデッタ「すごーい」
作者「自分ではそんな重用するようなキャラじゃないと思ってたんですが、蓋開けてみたら便利に使ってますね」
シアン「そう、僕は便利なんだぞ! きゃははは!」
作者「噂をすれば影……」
シアン「ふふーん、実は作者の脳は僕がいじってるのだ」
作者「は?」
シアン「作品考えているときに裏から『ここで、シアン』『ここでも、シアン』って深層心理に訴えかけてるんだゾ」
 ニヤッと笑うシアン。

作者「な、なんだってー!」
シアン「クフフフ。『次作もシアン』『次作もシアン』」
作者「まさかそんなことをやられていたとは……」
シアン「頼んだよ! それじゃっ!」
 ピョンと飛びあがり、ドン! と衝撃波を放ちながらすっ飛んでいくシアン。

作者「……」
 小さくなっていくシアンを見つめる作者。

ベン「もしかして、シアンさんを次作に出すんですか?」
作者「わかんない」
ベネデッタ「出さないとはおっしゃらないんですのね」
作者「自分で自分のことが分からなくなってきたぞ。本気で操られている可能性が微レ存……」
ベン「じゃあ、そろそろ新キャラを作ったらいいじゃないですか」
ベネデッタ「そうですわ。新キャラ、新キャラ」
作者「うーん、シアンは強烈だから似たようなの作ってもシアンのコピーになっちゃうんですよね」
ベン「もっと強烈なの考えたらいいじゃないですか」
作者「もっと強烈……って?」
ベン「見た人を石にしちゃうような……」
ベネデッタ「それはメデューサですわ」
作者「簡単にキャラ殺されちゃったら物語が続かないので……」
ベン「うーん、見境なくキスしまくるキス魔の女神は?」
作者「わはは、面白いけどストーリーに落としにくいなぁ」
ベネデッタ「目隠ししてるとかはどうですの?」
作者「あー、最近流行ってますね。ちょっともう遅いかなぁ」
ベン「健気(けなげ)な女神はどうですか?」
作者「健気?」
ベン「献身的だけど弱いとか」
ベネデッタ「シアンさんと逆ですね」
作者「あー、真逆キャラねぇ……うーん」
ベン「難しいですか?」
作者「そのままじゃダメだなぁ。まあいいや、また何か考えてみましょう」
ベン「頑張ってください」
作者「さて、そろそろお時間ですが、読者の方に一言お願いします」
ベン「皆さん、応援してくれてありがとうです。今はハニーと幸せに暮らしています。また、機会がありましたら読んでみてくださいねっ!」
ベネデッタ「なにかもう少しエッジの立ったことできればよかったのですが、申し訳ないです。シアンさんみたいになれるように頑張りますわ。今後ともよろしくお願いいたします」
作者「いや、シアン真似しなくていいよ」
 苦笑する作者。

作者「それではまた、次作でお会いしましょう!」
ベン「ありがとうございました!」
ベネデッタ「感謝いたしますわ」