「まず、この番号に電話しろよ、電話口の奴の指示に従って、指定された日の夜に、ここから、少し離れた◯△ビルに行くんだ。場所、分かるか?」

(確か、裏通りの先の、寂れた商店街の裏手にある、廃墟ビルだ)

工藤は、手渡された紙を眺めながら、黙って頷いた。

「で、そこに行くと、顔写真を撮られて、他言しないという旨の守秘義務についての誓約書にサインさせられる。あとは、片足に命綱をつけて、バンジージャンプするだけ。撮影が終われば、金が現金で手渡される」

「マジで、それだけで、500万だったのかよ?」 

「あぁ、俺もビックリだよ。次は工藤、お前が生まれ変わる番だな」

田辺が、100円玉を工藤に手渡した。公衆電話から、かける電話代だ。

「この100円玉が、500万に変わるんだな」

気持ちが、昂るのを抑えられない工藤を見ながら、田辺が歯を見せて笑った。

(ん?)

田辺の笑顔を見ながら、どこか一瞬、記憶の糸が、引っ張られる感覚があった。

「工藤、どうかしたか?」

「……いや、なんでもない」

「工藤なら、絶対大丈夫だよ、頑張って」

田辺の笑顔に、工藤は頷きながら、100玉を握りしめた。