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 「ユリは、どうなの? 彼氏と。」
 「え、そこ聞く!?」
 今度は大学の友達のカリンが聞いてくる。同じく、高校の教室で今度は弁当を食べているから昼休みのようだ。カリンは大学を卒業してからも連絡が続いている数少ない友達の一人だが、そういえばここ2か月連絡をとっていなかった。
 「カリンには、わからないよ。」
 「え? え?? どういうこと???」
 「だから、高校からずっと付き合った彼と結婚したような、幸せ者にはわからないって。」

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 「ねえ、そんな夢ばっか見ないで、現実的に彼氏探しなよ。」
 またアキだ。高校のトイレで鏡越しに話している。いつの間にか制服は高校の赤いリボンが特徴的なブレザーに変わっていた。
 「じゃあ、高橋くん、かな。」
 「まじ? 英明くんとは大違いじゃん。」
 「でも、『結婚相手』って考えたら、現実的じゃない?」
 そうだ。高橋(元カレ)は、付き合った当初、とても大人に見えていた。旧帝大卒の国家公務員。私より5歳年上。同じ飲み会に参加して、そこからデートに誘われた。彼が連れていくお店は、どこもオシャレで高級そうで、美味しかった。
 「高橋くんって、正直顔、微妙じゃん。」
 「顔なんて、結婚したらどうせ飽きるんだから。」
 「しかも、勉強できるだけでしょ?」
 「でも、とんでもなく頭いいじゃん。」
 「それになんか、ちょっと自己中っぽいところない?」
 「私といるときは、私を喜ばせてくれるよ。なんかそういうところも大人っぽいっていうか、ほれちゃう。」
 夢の中の私は、たしかに高橋に恋をして、アキが止めるのも聞かず、一途に思って心拍を上げていた。

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