断られたら諦めるつもりだった。
しかし青年は、一つため息をついてからあっさりうなずいた。
「別に。好きにしたら」
「あ、ありがとうございます」
許可を得た私は、先ほどから気になっていた天体望遠鏡を観察しようと近づく。
大きくて立派な望遠鏡は、あまり詳しくない私にも高価な物なのだろうということがわかる。
「触らないでね。調節してあるから」
「あっ、ごめんなさい」
「……その制服、東高校?」
私には興味がなさそうだと思ったが、コミュニケーションを取る気はあるらしい。
もちろんこちらに無視する理由はない。
「はい。東高の2年です」
「僕も東高出身。もう10年近く前だけど」
「わっ、じゃあ先輩ですね!ええとお名前は……」
彼はちらりと私に目を向けて、「シュウ」と短く答える。
「シュウ先輩は……」
「僕は高校生じゃないし、『先輩』はいらない」
「シュウさんは、ここでよく星を見てるんですか?」
「うん」
「ここだと綺麗に星が見えるから?」
「それも、ある」