彼はその空き地の中で、大きな白い筒状のものを弄っていた。どうやら天体望遠鏡のようだ。
私から彼までの距離はほんの数メートル。何故人の気配に気が付かなかったのだろう。
不思議に思いながらも、私はハッとして頭を下げた。
「すみません、邪魔しちゃって」
「別に。いるだけで邪魔だとは思わない」
彼はそう答えたきり、私の方を見ないで望遠鏡弄りを続ける。
さっさとこの場を立ち去って、いい加減家に帰らなければ。
そんな思いが頭をかすめたが、やっぱりまだその気にはなれなかった。
部屋で一人になったら、また怒りの感情を持て余してしまう。
だから私は、青年に向かって半分ヤケになりながら言った。
「邪魔じゃないなら、一緒に星を見ていても良いですか?」