「……さすがに疲れた」
はあはあと肩で息をしながら腕時計を確認すると、針は8時過ぎをさしていた。
呼吸を整えて空を仰ぐ。
そこには満天の星が広がっていた。
「綺麗……」
見渡す限り無数の星。
ここは団地の中でも外れの方らしく、家や街灯が少ない。星がよく見えるのはそれが理由か。
私はしばらくの間、走った疲れや怒りの感情を忘れて見入ってしまっていた。
「星、好きなの?」
突如近くでそんな声がした。
人の気配を感じていなかった私は驚いて、声の方を見る。
声の聞こえた方は空き地になっており、そこにある貴重な街灯が声の主を照らしていた。
20代くらいの若い男性。
薄暗い光でそうはっきりと顔は見えないが、長い前髪と高めの鼻が印象的な青年である。