「……他の女にこんなことしたら、彼女さんに怒られるんじゃないですか?」
「え?」
私がどうにかそう言うと、シュウさんは腕の力を緩めて、心底不思議そうに首を傾げる。
そうか。
彼にとって私は、恋愛対象だとすら考えられない子どもなのだ。
「何でもないです。お幸せにっ!」
私は勢いよく頭を下げて、その場から逃げた。
困らせるだけだから、泣いてるところを見られたくなかった。
それでも最後だと思うと、どうしても好きな人の姿を目に焼き付けたくなって、空き地の方を振り返った。
しかし──
そこに、彼の姿はなかった。