「まあ、星を見てたら悩みがどうでも良くなるっていうのは賛成する」
シュウさんはしばらくしてからボソリと言った。
彼はおもむろに服の左袖をめくり、腕の内側を私に見せる。
「ここ、がオリオン座みたいに並んだほくろがあるの、わかる?」
「あ、ホントだ」
薄暗い街灯に照らされながら見ると、確かにほくろが綺麗にオリオン座のように並んでいるのがわかる。
「だけど本当の星座って、このほくろみたいに同じ平面上にあるわけじゃない。オリオン座の右上の星、ベラトリックスは地球から約244光年」
「……ものすごく遠くにあるっていうのはわかります」
「うん。でも冬の大三角も構成している左上のベテルギウス、あれは約642光年。隣に並んでいるように見える二つの星は、実は400光年ぐらい離れてる。その400光年離れた星の光を、地球人は平面上にあるかのように見て、勝手に“星座”なんてものをつくってる」