話、ちゃんと聞いてくれてたんだ。
それが驚きで、同時に嬉しかった。
「手を繋ぐ以上のことができないのが不満なら、キミと別れてからそういうことをしてくれる相手と付き合えば良い。そうしなかったのは、周りに自慢できる見栄えのする彼女を置いておきたいっていう自己中心的な思いがあったからだ。……好きにならなくて正解だったんじゃない」
「どうして……そこまでわかるんですか?」
「よく知っていたから」
「……?」
彼はそれには答えず、また黙ってしまった。
とりあえず、シュウさんが私は悪くないのだと言い切ってくれたのはすごく嬉しかった。
じんわりと涙があふれてくる。
初対面の人に泣き顔を見られるのは恥ずかしい。暗くて良かったと心から思う。