利香は自分の荷物を持つと、廊下へ通じる扉へと歩いた。扉に手をかけて、開く。ゆっくりと頭を出して周囲を見渡す。
誰もいない。
そのまま外に出て、来た道を戻っていく。
さっき、クーラーのおかげで引っ込んでいた汗が、ものの数秒で噴出してくる。日差しが入ってこない廊下のはずなのに、自分の体の回りに日差しを発する太陽がまとわり付いているみたいに暑い。
彩音と話すことが出来てよかった。
彼女は、自分が思っていた以上に真っ黒で、それでいて美しい少女だった。
彼女を思い浮かべると、自然に睡蓮の花が思い浮かぶ。汚れてないふりをしながら、その実、汚れた泥から養分を吸って美しく咲く睡蓮。誰も何も知らずにその花を愛でているのが、滑稽で、面白い。
ニヤニヤしている顔を口で抑えて、美術室へ向かう。四階の隅にある自分の居場所に。
三階の踊り場まで登った時に、利香は、あっ、と口に出した。
しまった、彩音にお願い事をするのを忘れていた。
睡蓮の絵と絡ませるための、絵のモデルに。
頭を抱える姿が、目の前の鏡に映っている。それに『バカだな、利香って』と自分が自分に言っていそうな気がして、利香は悔しくなった。
誰もいない。
そのまま外に出て、来た道を戻っていく。
さっき、クーラーのおかげで引っ込んでいた汗が、ものの数秒で噴出してくる。日差しが入ってこない廊下のはずなのに、自分の体の回りに日差しを発する太陽がまとわり付いているみたいに暑い。
彩音と話すことが出来てよかった。
彼女は、自分が思っていた以上に真っ黒で、それでいて美しい少女だった。
彼女を思い浮かべると、自然に睡蓮の花が思い浮かぶ。汚れてないふりをしながら、その実、汚れた泥から養分を吸って美しく咲く睡蓮。誰も何も知らずにその花を愛でているのが、滑稽で、面白い。
ニヤニヤしている顔を口で抑えて、美術室へ向かう。四階の隅にある自分の居場所に。
三階の踊り場まで登った時に、利香は、あっ、と口に出した。
しまった、彩音にお願い事をするのを忘れていた。
睡蓮の絵と絡ませるための、絵のモデルに。
頭を抱える姿が、目の前の鏡に映っている。それに『バカだな、利香って』と自分が自分に言っていそうな気がして、利香は悔しくなった。