それと同時に、その桜の大木には見覚えがあった。夢で先生と見上げた公園の桜だ。そのことに驚いて、息を呑む。

『今日お前に雰囲気の似た黒猫と散歩で来た公園で見つけた』

本文はそれだけ。よく見ると、タイトルに『並木道より綺麗だろ?』とある。

「なんだ、先生も同じこと考えてた」

私は笑う。

 あれは夢だったのだろうか。でも、猫になるなんて非現実的だ。もしかしたら、先生と同時に、同じ夢を見ていたのかも知れない。それはそれで運命みたいで良いな。

 私は少しだけ返信するのをを待った。

 夜になって、私は病室の窓際まで行った。月明かりに照らされた、綺麗な桜を写真に撮る。

 その写真をメールに添付する。少し考えて、タイトルに『月が綺麗ですね』と添えて返信を送った。

 きっと今の私はいつかの先生みたいに、いたずらっ子のような顔で笑っているに違いない。

 その日、足の痛みはほとんど無かった。窓際まで動ける程だ。鳴上先生の、優しい手当のおかげかも知れない。

 ――久々にゆっくり眠れた。



 あれから私は退院して、新しいクラスでも頑張って過ごしている。お昼休みには柚騎と他クラスから美香も合流して一緒にお弁当を食べていた。

 ガラケーの待ち受けは先生からの桜の写真。お守り代わりにして、勇気を貰っている。